限りある経営資源を効率良く配分!「プロダクトポートフォリオマネジメント」の活用方法
限りある経営資源を効率良く配分!「プロダクトポートフォリオマネジメント」の活用方法
この記事の目次
どのような企業であっても、ヒト、モノ、カネ(+情報)の経営資源は有限です。限られた資源をどのようにして選択と集中を行うかによって、その企業の経営手腕が問われます。製品やサービスの種類が増えると徐々にその判断が複雑で難しくなりますが、そのような際に役に立つフレームワークとして、今回は「プロダクトポートフォリオマネジメント」をご紹介します。
プロダクトポートフォリオマネジメントとは
プロダクトポートフォリオマネジメントが生まれた背景
プロダクトポートフォリオマネジメント(以下、PPM)とは、特に多数の製品や事業を展開する企業が、どこに経営資源を配分するべきかの指針を得るためのフレームワークです。元々は1960年から70年代台に掛けて170以上の事業を多角展開していたGE(ゼネラル・エレクトリック)向けに、経営資源を再配分し、より戦略的な事業展開を行うためにボストンコンサルティングなどが開発したものです。
PPMの全体像
PPMでは、縦軸に「市場成長率」、横軸に「自社製品の市場シェア」を取り、各製品を該当するポジションにプロットします。さらにそれぞれの事業規模を円の大きさで表示します。
市場成長率の視点で見ると、高い成長が見込める市場はどの企業からも魅力的であるために参入する企業が多くなり、結果的に競争も激しくなります。従って競争に打ち勝つためには積極的な投資が必要になります。市場が成熟しておりそれほど成長が見込めない場合は、新規参入が少ないために市場シェアにも変化があまりありなく、積極投資する企業も少なくなります。
横軸の市場シェアでは、シェアが高い場合はスケールメリットを享受でき、生産性が向上することによって製品コストを下げることができるようになります。また、経験値(経験曲線)が上がることによっても生産性や品質、流通や販売促進などの効率を上げることが可能になります。
PPMではこれら2軸を基準に次の4象限に分けて、事業利益創出の難易度や追加投資の必要性を明らかにし、適切な経営資源配分を判断します。
1.成長市場・市場シェア(花形商品:star)
2.成長市場・市場シェア(金のなる木:cash cow)
3.成長市場・市場シェア(問題児:question mark)
4.成長市場・市場シェア(負け犬:dog)
続いては、各象限が採るべき経営資源配分戦略を見ていきましょう。
各象限における戦略
花形商品(高成長市場・高市場シェア)
市場の成長率が高くしかもシェアも高い製品は「花形商品」と呼ばれます。一見、すべて望ましい状況で安穏なポジションのように見えますが、成長性があり魅力的な市場はそれだけ競争が激しく、新規参入も多くなります。そのため、現在の有利なポジションを守り抜くためにも、積極的に経営資源の投入を行う必要があります。競争に負けて市場シェアを落とすと、より不利な「問題児」(後述)になってしまいます。ここでは、現在の有利なポジションを維持し、市場の成熟によって「金のなる木」にすることが目標になります。
この象限では、市場シェアが大きいため売上規模が大きくなりますが、投資も膨らむために利益はそれほど確保できません。
金のなる木(低成長市場・高市場シェア)
高い市場シェアを確保している市場が成熟し、成長率が落ちてくると「金のなる木」と呼ばれるポジションになります。成熟市場では上記の市場成長期に投資した経営資源が有効に機能して、以前ほどの投資は必要なくなります。また、ここに至るまでにさまざまな経験を積んでいるために、少額の投資でも効率良く利益などに結びつけることができます。さらに、設備などの償却が完了している場合が多いため、多くの利益を上げることができます。
金のなる木で重要なことは、「効率」です。生産や流通、販売など各方面における効率をさらにアップさせるような仕組みづくりなどによって投資対利益を最大限することを目指します。得られた利益によって、後述の「問題児」(または花形商品)へ投資することで、ポートフォリオ全体の強化を図ることが目標です。
問題児(高成長市場・低市場シェア)
成長率が高い市場で自社のシェアが思いどおりに確保できていないポジションが「問題児」です。シェアを拡大して花形商品へと成長させたいところですが、成長率の高い市場ですので競争が激しく、投資に対する効果が十分に現れてない状態と言えます。
問題児は花形商品へ成長する可能性を秘めた「種」であるとも言えますので、各商品の成長見込みの有無を慎重かつ十分に見定めた上で、投資規模や手段を検討する必要があります。ここでは、他商品などから得られた資金などを活用し、投資対象を見極めて花形商品へ成長させることが目標になります。
負け犬(低成長市場・低市場シェア)
低市場成長・低市場シェアにある商品は「負け犬」と呼ばれます。市場の成長が期待できず、市場シェアも確保できていない状態ではなかなか思いどおりの利益を確保できません。かといって投資するほどの市場の将来性もありません。また、当該市場でのノウハウをあまり持っていないことが多いために、ビジネス上のリスクを生じる場合もあります。
残念ながら、ここではできるだけ早く市場撤退することを目標とします。ただし、同市場でシェア拡大を目指す企業も存在しますので、単純に事業縮小や工場閉鎖などによって事業撤退するのではなく、可能であれば他企業への事業売却を成立させることでできるだけ損失を抑制することを検討すべきです。
まとめ
- プロダクトポートフォリオマネジメントは、多数の商品や事業を展開する企業が、的確に経営資源の配分ができるようにサポートするフレームワーク
- 市場成長率と市場シェアの2つの軸で商品をプロットし、それぞれが高いか低いかの組み合わせで4象限を区分。各象限の状況に適した経営資源配分を判断する
- 成長率もシェアも高い「花形商品」は、大規模投資してシェア堅持する。市場が成熟し成長率が低くなるとそれほど投資しなくても利益が上がる「金のなる木」となる。
- 成長率が高いがシェアが低い「問題児」は、成長性が見込める商品を選別した上で、花形商品となるよう投資する。双方とも低い「負け犬」は市場撤退を検討する。
製品ラインナップを増やせば、それだけ事業リスクは減りますが、製品戦略が複雑化します。そのような場合にこのPPMを活用することで、比較的シンプルにリソース配分の適正を判断することができます。多角化戦略時に行き詰まったらぜひ一度PPMを活用してみてください。