早い者勝ちとは限らない!? 先発優位と後発優位の考え方

ファーストペンギンとは、元々リスクを恐れず天敵がいるかもしれない海に真っ先に先陣を切って崖から飛び込み餌を取りに行くペンギンのこと。セカンドペンギンとは、ファーストペンギンが飛び込んだ後に、ファーストペンギンが天敵に襲われないのを確認、安全を確かめてから飛び込むペンギンのことです。ファーストペンギン/セカンドペンギンの例は、ビジネスの世界を語る際にもよく比喩として用いられます。

早い者勝ちとは限らない!? 先発優位と後発優位の考え方

ファーストペンギンとは、元々リスクを恐れず天敵がいるかもしれない海に真っ先に先陣を切って崖から飛び込み餌を取りに行くペンギンのこと。セカンドペンギンとは、ファーストペンギンが飛び込んだ後に、ファーストペンギンが天敵に襲われないのを確認、安全を確かめてから飛び込むペンギンのことです。ファーストペンギン/セカンドペンギンの例は、ビジネスの世界を語る際にもよく比喩として用いられます。

なぜなら上記の逸話は企業が新製品投入などのビジネス上のチャレンジを行う際の状況と酷似しているからです。簡単に言うと、先行のファーストペンギンはハイリスク/ハイリターン、後発のセカンドペンギンはローリスク/ローリターンということになりますが、もう少し詳しく見てみた方が良さそうです。

セカンドペンギンは単なるモノマネか?

自分(自社)は、いつもセカンドペンギンでチャレンジャー精神がない! と嘆く必要はありません。確かに他人や他社を風よけにして自分だけ安全な道を進むのは、後ろめたかったり劣等感を感じるかもしれません。

しかし例えば、先発企業がすぐれた技術を有していたとしても、必ずしもビジネスセンスに優れていているとは限りません。極端にいえばせっかく良い製品を開発してもそれを明快に消費者に説明したり、しっかりと消費者の手元まで届ける能力やリソースが不足しているかもしれません。

そういった場合には、後ろに立つ後発企業が、より確実に消費者に製品を届けて、その利便性を享受させる使命を帯びることになります。後発企業は製品開発にリソースをあまり使っていない代わりに、マーケティングやデリバリーに投入できるリソースがあるはずです。

それを有効に活用して手軽に、また可能であれば安価に消費者が手にすることができるようにするのが後発企業です。一見単にモノマネ企業と思われがちなセカンドペンギンも、消費者から見た場合にはこのような意味があります。

ファーストペンギンにしろセカンドペンギンにしろ、どちらにも有利な点があり同時に不利な点が存在します。ファーストペンギンにとって有利ことを「先発優位」、セカンドペンギンに有利なことを「後発優位」と呼びます。

先発優位

先発優位の内容はさまざまな側面から多くの点が指摘されています。主に次のようなものがあります。

「おいしい」市場を獲得できる

先発ブランドとして最新の製品を市場投入することは、いわゆるイノベーター層を中心にまずは市場を形成することになります。通常イノベーター層などは価格にはそれほど敏感でないために、多くの利益を稼ぐことができる可能性があります。

他社に対して心理的な参入障壁を形成できる

一番乗りですので後発が出るまではその製品しかありません。例えば「サイクロン式掃除機といえばダイソン」のように、消費者の心の中でその商品カテゴリーと製品が強く結びつき代名詞となることで、他社製品に対する参入障壁を形成することができます。

ユーザーの声を反映させることができる

先行している分、ユーザーニーズや不満などの声を集めて製品に反映させ、消費者のニーズにマッチした製品に改善させることができ、満足度を高めることができます。

経験効果により生産コストが下がる

一般的に製品生産数量が多くなるほど1製品あたりのコストが下がります。後発製品が投入されるまでの間に先発企業が生産した台数分その経験効果が働き、コスト競争力が向上します。

製品規格の決定に主導的役割を果たしやすい

自らが切り開いた市場であれば業界内のデファクトスタンダード競争において、有利なポジションに就くことができます。業界内の規格争いは、状況によっては製品の死活問題を決める重要な要素となります。
逆に先発企業故に難しい点や不利な面も存在します。

  • 先発企業にふさわしい新製品を開発する開発力が必要

先進技術を用いたり、今までにない発想や優れたデザインによって後発企業が簡単には真似できない製品を生み出す開発力が必要になります。少しだけ目新しい製品ぐらいでは、却って後発企業に利を与えてしまいます。

  • 新製品を認知させるに、膨大な宣伝広告費が必要になる。

一般的に、新たに投入する製品が画期的であればあるほど、その良さを消費者に伝えるためのコストが大きくなります。消費者が今まで考えも及ばなかった製品であるわけですから、何がすごいのか?を理解するのにはどうしても多くの時間を要します。

  • 素早く参入障壁を設けなければ、後発に市場を奪われる

先発企業の強みの1つが「参入障壁を築く」ことにありましたが、逆に素早く強固な参入障壁を設けることができない場合は、簡単に後発企業に参入を許し、せっかく苦労して開拓した新たな市場を奪われてしまいます。

後発優位

翻って後発企業が不利かというともちろんそうではありません。一見ファーストペンギンの後を追っているだけのように見えて地味なイメージがありますが、純粋に「ビジネス視点」で評価すると正しい選択であるケースも多くあります。後発が優位な点は以下のようなものがあります。

開発投資が少なくて済み、開発力もそれほど必要ない

一から製品開発をする必要がありませんので、開発コストや開発力がそれほどなくても市場参入できます。

すでに市場が形成されているので初期の宣伝広告費が少なくて済む

新しいタイプの製品認知はすでに先発企業が行ってくれているはずです。後発企業は自社製品の認知や訴求をするだけなので、先発企業に比べて宣伝広告費が低く抑えられます。

先発企業の成功/失敗事例が分かっているので安全に市場参入できる

先発企業における成功や失敗の要因を分析して学習することで、低リスクで効率良く製品開発や市場投入を進めることができます。

少しの製品改良をすることで、少コストで優位な立場に立てる可能性がある

先発の製品に少しだけ便利な機能を加えたり、部分的に改良したりするだけで消費者受けし、一気に形勢を逆転できる場合があります。特に近年のコンピュータ/ネットワーク関連の情報機器やサービスの類では、そのような傾向が顕著です。

後発企業を純粋にビジネス視点で評価した場合、一般のイメージとは少し違って非常に効率良く新規事業を展開しているということになります。

先発と後発、どちらを選ぶべきか?

それぞれメリット/デメリットがある先発と後発ですが、どちらを選択するかは自社や競合、市場の状況などから判断するべきです。

例えば自社に現在それほど開発力がない場合に無理して先行優位を求めても、リスクが高いだけでしょう。逆に開発力が非常に高い企業であれば、先行優位を生かして勝負する方が有利にことを運ぶことができます。

トヨタ自動車は以前は、ほぼホンダや日産のセカンドペンギンとして新しいカテゴリーの製品を自らは開発せずに、他社が形成した市場に常に後発参入し、その生産力や品質の高さで勝負してきました(そして多くの場合勝利を収めてきました)。

しかし現在ではご存知の通りハイブリッド車や燃料電池車など先進的な製品を投入し、逆に他社が追従するケースもあります。また同社は次世代の主流技術となるであろう電気自動車(EV)や自動運転技術においても主導権を握るためにすでに動き始めています。同じ企業でも状況に応じて戦略を変更する典型的な例と言えるでしょう。

まとめ

  • リスクを犯して新製品などを積極的に投入する際に生じるメリットを「先発優位」、他社が切り拓いた新市場に後発で参入する場合に有利な点を「後発優位」という

  • 先発優位な点は、新市場のおいしいところを享受できたり、経験効果によってコスト競争力が向上する点などがある

  • 後発優位な点は、少額の開発投資で市場参入できたり、先発企業の事例を参考にして低リスクで参入できたりする点などがある

  • 先発と後発のどちらを選択すべきかは、各企業や市場、競合の状況などにより判断するべき

グローバルでいうと、Apple社は先発企業の代表格、マイクロソフト社が後発企業の代表格と言えます。しかしいずれの企業もそれぞれの持ち味を生かした「先進的企業」であるということは間違いありません。

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