キーワードは「標準化」成熟度モデルの6段階が競争力強化を実現する

キーワードは「標準化」。成熟度モデルの6段階が競争力強化を実現する

キーワードは「標準化」成熟度モデルの6段階が競争力強化を実現する

企業の「業務」、いわゆる「オペレーション」と言われる領域の良否を評価するのはなかなか難しいものです。例えばミスや不具合、クレームの発生率など、結果として計測可能な要素はありますが、業務そのものを「測る」基準は多くはありません。

本日ご紹介する「成熟度モデル」はそのような業務そのものを、「標準化」の視点で業務の成熟度として評価するためのフレームワークです。業種などによってオペレーションの重要性は変化しますが、一方でどのような業務でもオペレーションが発生しますので共通の課題も多いはずです。ぜひとも参考にしてください。

成熟度モデルの6段階とは

成熟度モデルは、元々は米国の情報システムコントロール協会とITガバナンス協会が提唱するITガバナンスの成熟度を測るフレームワークである「COBIT」の中で用いられているものです。業務の管理・標準化の視点がまったく見当たらないレベル0から、業務プロセスが最適化された状態のレベル5までの6段階の状態を定義しており、成熟度モデルの6段階と呼ばれます。各レベルは次のように定義されています。

レベル0:プロセス不在

業務プロセスという概念が存在しておらず、そこに問題や課題があることすら認識していない状態。

レベル1:初期/個別対応

問題の存在と何らかの対応の必要性は認識されているが、対応がその場限りまたは個別のアプローチを採用。標準化されたプロセスおよび全体的なマネジメントが存在しない状態。

レベル2:再現可能

同じ業務を行う場合は、担当者が違っても同じ手順を踏むような状態にまでなっている。しかし、標準プロセスを習得するための研修や指示、情報共有などがベテラン社員などの個人の手に委ねられており、正確かつ効率的に伝わらない場合がある。

レベル3:プロセスが定義されている

プロセスが標準化され、なおかつ文書化されている状態。そしてそれが研修などの方法によって伝達されている。しかしその手順に従うかどうかは個々人に任されているため、逸脱していても発見が難しい。また、手順が標準化されているとはいえ、既存の手順を標準化したのみで最適化はされていない。

レベル4:管理/測定可能

定められた手順が遵守されているか否かモニタリングなどによって計測可能な状態。手順通りでない場合には、必要な措置がとられる。手順自体の有効性も常に検証され、改良が加えられる。また、部分的に自動化やツール化も行われている。

レベル5:最適化

継続的なモニタリングおよび改善活動の結果、手順がベストプラクティスのレベルにまで達している状態。同時に、ITによる統合的な自動化によってワークフローが自動化している。

一般的にレベル2以上が、組織的な手順化が実現している状態と見られ、手順の標準度合いや管理体制、最適化の度合いなどによってレベル分けがなされます。

成熟度モデルの特徴

成熟度モデルは単に評価するためだけのものではありません。例えば業務の標準化が必要だとは分かってはいても、自社業務の現在の標準化は客観的に見てどの程度なのか、現状を踏まえてどのような状態を目指すべきなのかを具体的に示すなど、実践的な指針を与えるための基準です。

COBITでは(IT)プロセスを、「計画と組織」、「調達と導入」、「デリバリとサポート」、「モニタリングと評価」の4つのドメインおよびさらにそれを細分化した34のプロセスを管理単位とします。

しかし、その全領域/プロセスでレベル5を目指す必要はありません。自社の置かれた市場環境やビジネス目標、運営環境などを考慮し、必要十分な基準を目標として定めるべきだとしています。端的に表現すると、「ある領域/プロセスでどのレベルにあれば市場での競争優位を獲得することができるのか」を基準に目標レベルを定めます。従って領域/プロセスによって目標のレベルが異なるのが一般的です。

また、例えば目標がレベル5で現状がレベル2の場合、いきなりレベル5を目指すと、手順変更を短期間かつ大規模に行わなければならず、実業務に無理やひずみが生じる恐れがあります。仮に最終目標が数レベル上位だとしても、次のレベルの達成を当面の目標とします。そもそもの目的は標準化ではなく、業務の成熟度を上げて自社の競争力を強めることです。標準化によって実業務が混乱してしまっては本末転倒です。成熟度モデルは、各レベルでの達成度合いを明確にすることで、「次に何を満たせば良いのか?」がすぐ分かり、1ステップずつレベルアップしていくことができるのが特徴の1つです。

業務成熟度の評価視点

それでは業務の成熟度または標準化はどのような視点で評価すればよいのでしょうか。COBITでは6種類ある「成熟度属性」という形でその評価の視点が挙げられています。具体的には以下になります。

認識および周知

「プロセス標準化」の必要性の認識と周知の度合いを表す。レベル1では必要性が認識されつつあり、周知は散発的に行われている。レベル5に達すると、必要要件が先進的かつ先見的に認識されており、統合された周知ツールを用いて先を見越したさまざまな周知が行われる。

ポリシー、標準、および手順

プロセスの実施基準に対する方針の下での手続きの標準化の度合いのこと。レベル1では、プロセスおよび実施基準が場当たり的であり、ポリシーも定義されていない。レベル5になると外部からのものも含めたベストプラクティスと標準が適用されており、文書化されたプロセスを基にワークフローが自動化されている。

ツールと自動化

プロセス管理をどの程度ツール(IT)によって自動化しているかの度合いのこと。レベル1では、デスクトップツール程度が使用されているが、使用に際しては特に定められていない状態。レベル5になると、標準化されたツールが企業全体で使用されており、プロセス全体をサポートしている。またツールがプロセス改善や例外検知のサポート機能を持つ。

スキルと専門知識

プロセスの遂行や管理に関する専門スキル向上のための研修、資格取得、修得の度合いを表す。レベル1では必要なスキルが特定されておらず、正式な研修も行われていない。レベル5では達成目標に基づいて正式かつ継続的なスキル向上が推奨され、ベストプラクティスに基づいた教育研修に対応している。

実行責任および説明責任

意思決定に対する説明責任と実行責任の定義・役割の浸透度合いのこと。レベル1では、実行責任・説明責任とも定義されておらず、各自個別のイニシアチブに基づいて対応している状態。レベル5では、プロセスオーナーが必要な権限を与えられており、実行責任が組織全体に浸透している。

達成目標の設定および成果測定

効率化や有効性に対する成果目標、効果測定プロセスの整備、およびビジネス達成目標のそれぞれが関連付けされ、モニタリングされている度合いを表します。レベル1では達成目標が不明確で、かつ効果測定も行われていない。レベル5では、統合された成果測定システムが存在し、例外が発生すればマネジメント層によって確実に発見される。また根本原因を分析することによって継続的な改善が日々行われている。

まとめ

  • 成熟度モデルとは標準化の視点で業務の成熟度を評価するためのフレームワーク
  • 標準化の視点がまったくないレベル0から、プロセスが最適化されたレベル5までの6段階が存在する
  • 成熟度モデルは単に評価するためだけの基準ではなく、企業の競争力を上げるための実践的な手法

商品開発力や販売力などは少数の精鋭部隊があればある程度強化することもできますが、業務遂行能力の強化は組織全体で臨まなければ実現が難しいものです。その際ポイントになるのか標準化の視点です。業務遂行能力に課題を持つ組織は一度この成熟度モデルの6段階を参考にされてはいかがでしょうか。

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