ビジネスのすべてが分かる!?「ビジネスモデルキャンバス」活用方法
ビジネスのすべてが分かる!?「ビジネスモデルキャンバス」活用方法
この記事の目次
近年「ビジネスモデル」という言葉を耳にする機会がまた増えてきました。ITの進化によるビジネスモデルの多様化などが影響していると推測されますが、そのビジネスモデルを可視化するツールとして使わるのが「ビジネスモデルキャンバス」です。今回はビジネスモデルキャンバスとはどのようなものなのか? またその活用方法などについて解説します。
ビジネスモデルの意味
ビジネスモデルは狭義には、単に収益を上げる構造、いわゆるマネタイズを指すケースもありますが、本来はもう少し広い意味を持ちます。誰に何を、どのように提供して、どのように収益を上げるのか? すなわち提供する価値とその提供方法および対象、そしてそこから収益を上げる具体的な方法までの一連の仕組みや活動のことをビジネスモデルとするのが一般的です。
そしてビジネスモデルをしっかりと定義することは、新規事業開発のみならず既存事業の見直しなどにも有効です。反対にビジネスモデルが明確に定義できなかったり、無理や矛盾が生じている場合には、事業の継続性に何らかのリスクが生じる可能性があります。
ビジネスモデルキャンバスとは?
「ビジネスモデルキャンバス」は、日本には2012年に「ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書」(アレックス・オスターワルダー、 イヴ・ピニュール著)という本で紹介され、現在はスイスのコンサルティング会社Strategyzer社が展開している、ビジネスモデルを可視化するためのフレームワークです。ビジネスモデルの設計書と言っても良いでしょう。
1枚のシートにビジネスモデルの要素となるものをすべて表現し、一目瞭然で事業の全体像を把握できるのが特徴。右側に「誰にどのような価値を提供するのか?」という主に市場に関すること、左側には「企業の活動やリソース」などの主に会社側のこと、そして下部に「収益およびコスト構造」を記載します。
ビジネス全体を網羅的に可視化できることから、ニーズとシーズの関係や、収益およびコストと社内リソースの関係、また顧客と価値提供方法の関係などの全体の細かな関連性を把握しながらビジネスプランニングできることが大きなメリットです。ビジネスプランニングのトレーニングなどにも有効なツールだと言われています。
ビジネスモデルキャンバスの具体的な項目・内容
具体的にどのような項目、内容を記載するのか、「市場」、「企業(自社)」、「収益・コスト構造」のブロックごとに見てみましょう。
市場に関すること
市場に関するブロックには以下の4項目を記載します。
顧客(Customer Segment、CS)
ターゲットとなる顧客層です。法人または個人、さらには顧客の属性などをできるだけ具体的に記載します。複数の顧客層が考えられる場合はそのすべてを記載します。
価値提案(Value Propositions、VP)
顧客に提供する価値です。ビジネスモデルキャンバスでは、提供価値を「顧客の課題を解決する」ものと、今までにない「新しい価値の提案」の2つに分けて考えます。該当製品がいずれか一方のみしか提供していなくても問題ありません。
チャネル(Channels、CH)
提供する価値をどのような方法で顧客へ届けるのか、また認知や購買促進はどのような方法を用いるのか、などについて記載します。
顧客との関連(Customer Relationships、CR)
顧客との接点や関係の継続性、展開する手段などについて記載します。例えば一時的なサービスなのか継続的なサービスなのか、また、顧客自ら進んでサービスを受けに行く必要がある(セルフサービス)のか、顧客が待っているところに製品やサービスを提供しに行くのか、などについて記載します。
企業(自社)に関すること
企業(自社)に関することは以下の3項目です。
主要活動(Key Activities、KA)
顧客へ価値を提供するために、自社が主にどのような活動を行わなければならないのかについて記載します。「事業内容」と言い換えることができます。また、次項の「キーリソース」を増やしたり強化する活動も事業に必要な活動ですので主要活動に含めます。
キーリソース(Key Resources、KR)
ヒト、モノ、カネ、情報などのいわゆる経営リソースのことです。また企業が持つノウハウもリソースの一部として考えます。特許やブランドなども同じくキーリソースに含めることができます。
キーパートナー(Key Partners、KP)
多くのビジネスは、一企業単独ではなくさまざまなパートナー企業などの存在によって成り立っています。仕入れ業者や部品加工業者、またデリバリー企業や販売企業など、主要なパートナー企業などについて記載します。
収益・コスト構造
収益・コスト構造のブロックには、収益の流れとコスト構造について記載します。
収益の流れ(Revenue Streams、RS)
どのような方法、名目で収益を上げるのか、またその特徴を記載します。例えば物販やサービス利用料、会費、仲介手数料などのさまざまな方法があり、それが継続的か一時的か、また利益率はどの程度か、副次的な収入が見込まれるのか否かなどを記載します。
コスト構造(Cost Structure、CS)
どのようなところにどのようなコストが発生するのか、主要活動やキーパートナー、キーリソースなどに関わるものを中心に、主なコスト構造を記載します。仕入原価や人件費、研究開発費などさまざまな名目があり、継続的なものか否か、固定費か変動費かなどの特徴も記載します。
ビジネスモデルキャンバスの作成と活用
主要な箇所から作成する
上記のようにビジネスモデルキャンバスは、多くの項目を確認し記載していく必要がありますが、一般的には最も需要な「顧客」、「価値提案」および「主要活動」の確認から始めます。これらは「誰に、どのような製品によって、どのような価値を提供するのか?」というビジネスの根幹に関わる部分となります。続いて上記以外の「市場」や「企業」のブロック、最後にそれらを前提とした「収益・コスト構造」を確認・記載します。
既存ビジネスの現状確認と改善にも有効活用
ビジネスモデルキャンバスによって、そのビジネスがどのような構造になっており、どのように収益を上げているのかを一目瞭然で把握することができます。またどの箇所に課題があり、強化・改善するべき点も見つけやすくなります。ビジネスモデルキャンバスの活用のみで事業の改革を実施することは現実的ではありませんが、全体構造を確認した上で改善箇所・方法を考えるメリットは大きいものです。もちろんビジネスモデルキャンバスを使ってビジネスモデル全体を一から考え直したり、新たに作成することも有効です。
まとめ
- ビジネスモデルキャンバスとは、1枚のシートにビジネスモデルの要素となるものをすべて表現して可視化するツール
- ビジネス全体を網羅的に可視化することで要素間の関連性を把握しながらビジネスプランニングができるのが特徴
- 具体的には市場や企業、収益・コスト構造などについて記載していく
- 全体のビジネス構造を把握した上での、事業の改善点・強化点の発見などに活用できる
ビジネスモデルキャンバスは、既存のビジネスモデルを分析しつつ新たなビジネスモデルを考える際にも非常に有効なツールです。「これは面白いビジネスだな」と感じたものを対象に分析してみると、新しいビジネスのヒントが見つかるかもしれません。ぜひ試してみてください。