自社に最も有利な戦いを仕掛ける! コトラーの「4つの競争地位戦略」
自社に最も有利な戦いを仕掛ける! コトラーの「4つの競争地位戦略」
企業が選択できる戦略は非常に多く存在します。どのような戦略を選択するべきかについては、いつも頭を悩まされます。そのような際に参考にしていただきたいのが、本日紹介する戦略フレーム「コトラーの競争地位戦略」です。戦略を策定するためのフレームワークは多数存在しますが、選択基準を示すものはあまりありません。
さまざまな応用も効く考え方ですのでぜひ参考にしてください。
競争地位による戦略の必要性
格闘技や球技などさまざまなスポーツ競技において、体力や技術力に大きく勝る相手に正面から戦っても勝てる確率は極めて低いでしょう。格闘技ではそのような差によって勝敗が偏ってしまうことを避けるために階級制度を取っている場合もあります。そのような階級制度がない場合、体力などで劣っている競技者は、著しく不利になります。
しかし、相手と自分の強みや弱みを徹底的に分析して、相手の強みをできるだけ無力化し、さらに弱みに付け入って攻めることができれば、勝率も上がるでしょう。逆に体力などに勝る方は、そのような戦術を防がなければ、思わぬ敗北を被ることになります。
およそ「競争」と名の付くものは、ビジネスにおける競争も含めて、上記のスポーツ競技などと同じように、いかに「自らの勝率が高くなる方法で戦うか」が重要になります。もちろん一般的に弱者の立場にあるものだけではなく、強者の立場にあるもでも安易に競争を行っていると、いつの間にか自らの強みを削ぎ落とされて、現在の有利なポジションを脅かされることになります。
そしてビジネス分野で、市場におけるさまざまな立場に適した戦い方=競争戦略を類型化し、それぞれが選択すべき戦略を示したのが、経営学者フィリップ・コトラーが1980年に提唱した4つの競争地位分類による競争戦略です。
4つの競争地位戦略とは?
コトラーの4つの競争地位戦略とは、各企業をその量的経営資源と質的経営資源、および市場シェアから4つのポジション=地位に分類し、それぞれに適した競争戦略を定めたものです。具体的には、「リーダー」、「チャレンジャー」、「ニッチャー」、そして「フォロワー」の4種類です。
リーダーは、業界でのトップシェアを持つ企業のことで、一般的に経営資源の量も質も豊富です。チャレンジャーは業界2番手のポジションで、トップシェアを虎視眈々と狙う立場です。フォロワーは、トップシェアを狙う経営資源に不足しているために、現在の下位ポジションでのシェアや利潤維持を目指す企業、ニッチャーは、経営資源が少ないために上位シェアを狙うことは難しいが、特質した技術などの質の高い経営資源を持っている企業が取りうるポジションです。それぞれの状況や戦略を具体的に見ていきましょう。
リーダー
トップシェアであるリーダーは、経営資源の量、質とも豊富であるために、全方位戦略を採択してまず他社の追従を抑え込む戦略を取る必要があります。一般に、チャレンジャーや他のポジションが仕掛けてくる戦略を無効化するような戦略、例えば新製品を模倣したり、同じ市場や地域で販売したりする無効化戦略を用いることで、現在のトップシェアを守ることを最優先することになります。
また、シェアトップであるリーダーは、市場全体の拡大に対する恩恵を最も多く受けることになりますので、市場規模全体を拡大する戦略も積極的に行っていく必要があります。反対に、市場の価格水準が下がると最も多くの不利益を被るために、値引きなどを極力発生させずに品質やブランド力で販売を促進し、価格維持を図ります。
チャレンジャー
チャレンジャーは、リーダーの座を目指している業界2番手や3番手の企業です。リーダーと同様の戦略を取った場合、経営資源の差によってリーダーの方が有利になり、無効化戦略によって自社戦略の効果が半減してしまいます。従って、リーダーとは異なった戦略を用いなければ、トップを脅かす存在にはなれません。
そこで、リーダーがいまだ手を付けていない分野に注力することで、そこでのシェアを素早く伸ばす戦略を取ることが良いとされます。もちろんリーダーの全方位戦略や無効化戦略によって阻止される可能性がありますので、リーダーの現状や対象分野の市場などを十分に調査・研究して、リーダーの戦略の効果が現れにくい分野や内容、そしてタイミングで戦略を実施する必要があります。
また、チャレンジャーは、自社よりもシェアの低い企業(=経営資源の少ない企業)のシェアを奪って、それをもってトップに臨むという戦略も有効です。
ニッチャー
チャレンジャーとしてリーダーを脅かす存在になるほどの経営資源は持ってはいませんが、特定の領域において豊富な経営資源を有していたり、卓越した優位性を持っている場合に、その特定領域において独占的な地位を確保する戦略です。
対象となる領域は、できるだけリーダー企業などが参入しにくいか、または参入してもあまり利益が出ない領域であることが望ましいといえます。その領域に経営資源を集中してトップシェアを維持することで収益を最大化します。もちろん、しっかりと他社の参入障壁を築いておかなければ、せっかく開拓して大きく育てた市場を、リーダー企業などにそっくり奪われてしまう恐れあります。
フォロワー
フォロワーは、チャレンジャーになるほどには経営資源を持っておらず、かといってニッチャーになれるどの卓越した技術などを有していないので、リーダーやチャレンジャーの戦略を模倣し、生産や物流などのコストを抑制することで利益を確保していくようなポジションです。
一般に、利益を上げるのが最も難しいポジションだと言われています。ただし、フォロワーとして戦略を進めながら徐々に経営資源を蓄え技術力を磨いた上で、チャレンジャーやニッチャーとして一気に攻勢に出るという戦略が取られる場合もあります。
まとめ
- 競争環境における自社のポジションに適した戦略を取ることの必要性をコトラーが「4つの競争地位戦略」として提唱した
- トップシェアの「リーダー」は、豊富な経営資源を活かした全方位戦略を用いるのが有利とされる
- No.2の「チャレンジャー」は、リーダーが参入していない領域で自社のシェア向上を図る戦略が有効
- 特化した技術力などを持つ「ニッチャー」は、その技術力を最大限活用できる領域での独占的地位を目指すべき
- 経営資源も特化した技術力もない「フォロワー」は、模倣戦略、コスト抑制によって利益確保する
競争地位戦略は、企業の事業戦略だけではなく、商品戦略やマーケティング戦略などさまざまな領域で応用が可能なフレームワークです。
また、組織内での自らのポジションを考える上でも参考になる考え方です。
ぜひいろんな場面で応用してみてください。