その目標は本当に適切か? 悩んだ時に使う目標設定フレームワーク「SMART」
その目標は本当に適切か? 悩んだ時に使う目標設定フレームワーク「SMART」
この記事の目次
ビジネス活動などにおいて、組織や個人の進むべきゴールとして、適切な「目標」を設定することは非常に重要なことは周知のとおりです。それでは適切な目標とはどのようなものなのでしょうか? どうすれば設定できるのでしょうか? 今回は適切な目標を設定するためのフレームワーク「SMART」をご紹介します。
明確な目標が設定されていない場合のリスク
ビジネス活動において、組織や個人の目標が全く設定されていないというケースはまれですが、部門やプロジェクトなどの場合は、明確な目標が設定されていないケースも見受けられます。明確な目標が設定されていない場合、何にリソースを集中するべきかなどの判断がつかないために、リソース「ヒト・ モノ・カネ」などの経営リソースを適切な配分が難しくなります。
また、目標達成に必要な課題抽出や仮説設定なども適切に行えなくなりますので、成果も上がりにくくなります。その結果自組織への評価が下がったり、メンバーのモチベーションも低下する恐れがあります。
ビジネスを成長させるための目標の条件
設定される目標の具体的な内容は、自組織の状況や市場の状況、組織のポジション、取扱製品やサービスの内容・性格などによって千差万別です。また、時代の趨勢や社会・政治の状況なども考慮する必要性が出てくる場合もあります。そのような状況を踏まえつつも、ビジネス領域において、一般的にどのような形式の目標が適切なのかを示すフレームワークの1つが本日ご紹介する「SMART」です。
SMARTとは、「Specific:明確性」、「Measurable:計量性」、「Achievable:達成可能性」、「Related:関連性」、「Time-bound:時間制約性」の頭文字から取られた造語。これらの要素を満たすことが、自らのビジネスの成長を達成するめの目標として必要だとする考え方です。
SMARTの詳細
それでは目標設定のためのフレームワーク「SMART」の具体的な内容を見ていきましょう。
SPECIFIC:誰が見ても分かるような明確性
目標設定は、周囲や自分自身に対する一種のコミットメントですので、それが不明瞭な場合は、目標自体の意味をなさなくなってしまいます。
「◯◯でトップになる、1番になる」などの目標は個人や組織にかかわらずよく見かけます。しかし、「どこで何のトップなのか」を明確にしておかなければ、それが達成されたのかどうかが分からなくなります。例えば商品開発プロジェクトなら、「3年後にシェアトップになる」、「同業界で開発サイクルスピード1位になる」、メンテナンスサービス部門なら「顧客満足度調査で1位を獲る」、「業界でのリピート購入率トップになる」など、どのような基準でトップなのかを明確にしておくことが重要です。
その他「◯◯を改善する」、「◯◯を向上する」などの場合も同様に、何をどれだけ改善するのか、向上するのか、誰が見ても分かるような形にする必要があります。
MEASURABLE:客観的に測ることができる計量性
例えば「他の人から一目置かれるような存在になる」のような個人の達成目標があったとします。目標設定の方向性としては必ずしも間違っているとは言えませんが、残念ながらそれが達成されたかどうかを客観的に評価することができません。
目標は達成するために設定するものですから、それが達成されているかどうか明確に判断できない目標は、目標として不適切だということです。仮にそれが人事考課の基準になる個人目標であれば、客観的な考課が難しくなるでしょう。
組織目標も同様です。例えば調達部門における「社員の利便性を向上する」などの目標は、その達成度合いを測ることは困難です。「平均調達スピードを現在の5営業日から3営業日へ短縮する」などであれば計測可能であり、かつどのように社員の利便性が向上したのかのイメージもつかむことができます。
ACHIEVABLE:現実的に手の届く範囲の達成可能性
あまりに低い目標は問題ですが、逆に実現不可能な目標を設定しても、その目標を形骸化させてしまうだけです。例えば海外取引の実績もないのに突然「海外売上比率40%以上を目標にする」などの目標を設定しても、担当者は萎えてしまうだけでしょう。「実現可能であり」かつ「頑張れば達成可能」なぎりぎりのレンジの目標に設定するのがマネージャーや経営者の腕の見せどころです。
「無理な理由を考える前に、実現する方法を考えろ」と言われるケースがありますが、それでも程度や限度があることを認識した上で目標設定することが必要です。
ビジネス分野での目標は、上位層や周囲の組織などと矛盾せず、しかも有機的に関連付けされている必要があります。さらに、関連する上下左右の組織や個人間の目標が、相乗効果によってより互いにより良い影響を与え合うような形が理想です。
例えば「新規取引数を30%から50%に引き上げる」という営業部門全体の目標があった場合、部門内の下部組織では「新規見込み客の発掘」など、直接関連する内容を目標にする必要があります。加えて周辺の部門でも、開発部門で「新規取引材料に使えるような商品パッケージの考案・開発」を目標にしたり、マーケティング部門で「新規取引向けのプロモーションで成果をあげること」を目標にしたりすることで、組織間の相乗効果が生まれてくることになります。
TIME-BOUND:いつまでに目標を達成すればよいのかの時間制約性
これは端的にいえば「期限」です。物事に期限が必要なことは今更言うまでもないことかもしれませんが、実際の目標にその期限が設定されていないケースも少なくありません。どうしても期限が設定できない場合は、目標自体が不適切なこともありますので、再度その内容を見直したほうがよいかもしれません。
まとめ
- ビジネス活動において明確な目標を設定することは、リソースを有効活用して効率的に成果を上げるために重要
- 個々の目標は状況に応じて千差万別だが、望ましい目標を設定するためのフレームワークとして「SMART」がある
- SMARTでは、明確性や計量性、達成可能性、関連性そして時間制約性を持つ目標が、より適切なものであるとする
登山の際に遭難する可能性が高いのは、山を登る時よりも下山する時の方が多い、とう話しがあります。登る際には「頂上までたどり着く」という明確な目標が存在するために、心身共に集中して、あらゆる手段を講じてその目標を達成しようとします。しかし下山の際は、すでに登頂という大きな目標を達成した後であり、集中力を欠いた状態で行動してしまう場合があるために、事故が多くなるそうです。ビジネスでも同様に、適切な目標のない組織や個人は、非常にリスクの高い状態であると言えるのではないでしょうか。