SIPOCダイアグラムを使って、ビジネスプロセスを鍛え直せ!

SIPOCダイアグラムを使って、ビジネスプロセスを鍛え直せ!

SIPOCダイアグラムを使って、ビジネスプロセスを鍛え直せ!

企業ポリシーや戦略によって、事業プロセスを重視するかアウトプットを重視するかの方向性は異なります。しかし、事業や業務のプロセスに不適切な箇所が存在すれば、アウトプットにも何らかの悪影響を及ぼすことは間違いありません。今回は、プロセス改善を目的とした分析のためのフレームワーク「SIPOCダイアグラム」をご紹介します。

SIPOCダイアグラムとは

SIPOCとは、ビジネスプロセスにおける代表的な5つの要素、サプライヤー(Supplier)、インプット(Input)、プロセス(Process)、アウトプット(Output)、顧客(Customer)の頭文字をとったものです。
そしてSIPOCダイアグラムは、それらの各要素間のプロセスなどをダイアグラムとして可視化したもので、ビジネスプロセス改善のための分析、およびそれに基づいた当該企業の収益性改善や競争力強化につなげるためなどに活用されます。ビジネスプロセス上で誰が、どのようなものが、どう関わっているのかがひと目で把握できるため、使い勝手がよく、SIPOCダイアグラムを起点にしてさまざまな分析や改善施策などが行われます。

SIPOCダイアグラムの概要

SIPOCのそれぞれの要素を、実際のプロセス順に従って上から下、または左から右に並べ、各要素に相当する内容を記載していったものがSIPOCダイアグラムです。各要素および具体的に記入する内容は以下のようなものです。

サプライヤー(S)

サプライヤーは、狭義のサプライヤー企業のみを指すのではなく、SIPOCダイアグラムとして記述しようとしている対象の事業や業務に対して、さまざまな素材を提供する要素です。従って原料供給企業の他にも、取引先顧客や協業している企業、また社内の他部署や経営層などの要素がサプライヤーになり得ます。

インプット(I)

サプライヤーから対象の事業に渡される素材や材料を指します。モノを製造する場合は原材料などが相当しますが、それ以外の事業の場合は、例えば仕様書や指示書などの情報であったり、クリエイティブ作業であれば写真や素材などになります。

プロセス(P)

実際に可視化しようとする事業や業務のプロセスです。実際のプロセスは数段階~数十段階にわたるケースがほとんどです。従って、ダイアグラム内に直接記載すると見にくくなるため、別紙または別枠に記載するケースが多くあります。

アウトプット(O)

事業プロセスを通過することで得られる、いわゆる「成果物」に相当するものです。自社が製造する製品類だけではなく、対象の事業や業務プロセス、顧客の種類などによって、例えば飲食業なら飲食物を提供したり、社内向けサービスである経理業務であれば立替経費の入金など、さまざまな種類のアウトプットが存在します。

顧客(C)

アウトプット、すなわち成果物を渡す相手です。広義の「顧客」として捉えて、取引先顧客だけではなく社内顧客や事業の依頼主などが顧客となるケースがあります。上記の例の経理部門における立替金の処理業務の場合は、自社内の社員全員が顧客となります。

SIPOCダイアグラムの記述手順

SIPOCダイアグラムによるプロセス分析は、まず対象の事業や業務のプロセスをSIPOCダイアグラムに書き起こすことから始め、それを分析することでプロセス改善などにつなげていきます。実際に書き起こす際には一般的には「SIPOC」の順ではなく、「POCIS」または「COPIS」の順でダイアグラムを作成していきます。

POCIS順での作成は、プロセス志向の記述方法で、現状のプロセスおよびそこから得られるアウトプットと、対象となる顧客の順に記述。そしてそれに必要なインプットとサプライヤーを記述します。実際の事業・業務プロセスから記述作業を開始するため、一般的なプロセス分析・改善に向いていると言われています。

一方COPIS順の作成は、顧客の記述から始めてその顧客向けのアウトプットを考えてから、事業・業務プロセスの分析に入ります。顧客志向で新たなサービスや商品を開発したり、顧客満足度を改善させたりするための分析に向いているとされます。

SIPOCダイアグラムの記述例

では具体的にどのような手順でSIPOCダイアグラムを記述していくのか、「経理処理のクラウドサービス開発」を仮の題材として、POCISの手順で作成する例を考えてみましょう。

まず、一般的なアプリケーション開発の大まかなプロセスとして、「要件定義」「設計」「作製(プログラミング)」「テスト」とします。アウトプットは、当該サービスが提供できる機能や価値ですので、例えば交通費精算が交通系ICカードのデータから直接処理できるようになったり、経費精算が領収書のカメラで撮影するだけ完了したりする機能を提供できるものとします。もちろん「必要な経理処理が実行できる」こともアウトプットとなります。

顧客には、企業の経理担当者やIT担当者、または経営層などが対象になるでしょう。もちろんサービス提供先として企業の従業員なども顧客になります。また、大企業は専用のシステムをすでに導入しているケースが多いですので、中規模以下の企業を主な顧客として絞り込んだ方が良いかもしれません。ここまでで前半の、P(プロセス)O(アウトプット)C(顧客)まで記述したことになります。

次に、サービス開発に必要なインプットを考えます。まず「要件定義」をしなければなりませんので、正しい経理処理手順や経理処理における課題などの情報が必要になります。より良いサービスを開発するためには、既成の経理アプリケーションの分析も必要かもしれません。
また、開発およびサービス提供には、それに適したクラウド環境が必要です。それらの供給元として考えられるのは、経理関連業務の情報源としては、社内の経理担当者や調査会社(調査データなど)、また競合製品などが考えられます。場合によっては経理関連のコンサルタントに入ってもらった方が良いかもしれません。クラウド環境の準備は、専門の事業者に頼むことになるでしょう。

これで一旦、POCISの手順でプロセスからサプライヤーまでの記述が終わりました。実際にはここから、記載した業務全体のプロセスの良否の判断や課題の有無などのプロセス分析を行い、より競争力の高いサービス開発の方法を模索することになります。

まとめ

  • SIPOCダイアグラムとは、ビジネスプロセス上の代表的な5つの要素を可視化してプロセス分析を行うためのツール
  • SIPOCはそれぞれ、サプライヤー、インプット、プロセス、アウトプット、顧客の各要素を表す
  • 実際のダイアグラムの作成はSIPOCの順ではなく、POCISまたはCOPISの順に作成するのが一般的

SIPOCダイアグラムはそれぞれの要素を縦または横に並べて表形式で作成できるために、業務フローチャートなどと比較して記述が簡単です。しかし内容的には重要なポイントはしっかりと押さえられているために、短時間で急所を捉えたプロセス分析が可能なツールです。業務プロセスに問題がないか否かを手軽に検証することができますので、ぜひ一度試していただきたいフレームワークです。

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