社内の誰も気が付かなかった隠れたニーズ~製品の掘り起こし

メルマガ配信を何度も重ねていく中で、想定外のことが起きたり、見えなかったものが見えてきたり、そんなご経験をされた方も多いのではないでしょうか。今回は、日々のメルマガ配信から「新たな発見」をされて、製品の掘り起こしにつなげることができた、とある企業様のお話です。

社内の誰も気が付かなかった隠れたニーズ~製品の掘り起こし

この記事の目次

メルマガ配信を何度も重ねていく中で、想定外のことが起きたり、見えなかったものが見えてきたり、そんなご経験をされた方も多いのではないでしょうか。今回は、日々のメルマガ配信から「新たな発見」をされて、製品の掘り起こしにつなげることができた、とある企業様のお話です。

ターゲットが絞り込めない

「出来ることなら、配信対象者を絞り込んだターゲット配信してみたいけれど、絞り込めないからねぇ。」

製品ラインアップが豊富な上、分野や特定のセグメントでメルマガ登録者を絞り込むのが難しく、ターゲットを絞った配信を行うアプローチに踏み切れずデータベース登録者全員への一斉配信のみ行っている、とある企業様。

メルマガ登録者数は決して少ないわけではなく、いくつかのセグメントも設定済なので、無理にでも絞りこみを行いターゲットを絞り込んで配信することも可能でしたが、対象者ごとに配信原稿を複数作成し、さらに細かいセグメント設定を行うことはマンパワー不足もあり「手間」として考えられていたため、ターゲットを絞り込んだ配信は現実的ではないと判断されていました。

本当であれば、コンバージョンを効果的に上げるためには、ターゲットを絞り込んだ配信を行うことが良いのですが、こちらの企業様の場合、データベース登録者全員への一斉配信の結果はまずまずで、クリック率も高い水準を保っていたため、「ターゲットを絞り込んだ配信はそのうちできればいい。」と、魅力的なアプローチとはあまり思われていなかったようです。

自社の営業戦略に沿って設定したセグメントも、メルマガ登録者に偏りがあるため「これなら、データベース登録者全員へ一斉配信しても同じ」という分類でした。

そのため、メルマガ原稿作成には、様々な工夫をされていました。発信情報に洩れがないように、また多岐にわたる製品群のPRに偏りがないように注意を払い、「最新情報」「新製品案内」「セミナー、展示会出展告知」を多く盛り込んだ内容にしていました。配信頻度は月に1回~2回。配信結果が悪くなかったのは、そんな工夫をされていたことが影響していたのかもしれません。

在庫処分PRプランを立てる

そんな中、そろそろ販売中止しようかと検討段階に入った製品の話が持ち上がりました。在庫が多少あるので、この機会に在庫処分セールなど行ってみよう!という企画です。

ただ、この製品は長年取り扱ってきた製品なので、一定数のユーザーは存在していたため、いきなり廃番とはせずにどの程度認知度や興味度のある製品なのか、今後の開発に役立てられる情報を集めてからセールを行うことにしました。

この製品は、他社で競合する製品も多数存在します。在庫処分までのPRプランは以下のようにしました。

  • 第1弾. 製品の紹介、特長を告知する(一斉メール配信・クリック計測)
  • 第2弾. 製品についてのご意見、改善希望点などを収集する(一斉メール配信・Webフォームによるアンケート実施)
  • 第3弾. 「値引きキャンペーン」を実施。製造中止予定であることを告知する(一斉メール配信)
  • 第4弾. キャンペーン終了後、サポート期間、保守期間の告知、製造中止再告知をする(一斉メール配信)

在庫処分PRプラン – 計画詳細

第1弾.製品の紹介、特長を告知する(一斉メール配信・クリック計測)

該当製品の一斉メール配信を使ってのPRは初めて。まずは製品情報を発信して、どの程度反応があるかみてみることに。以下の点について製品情報と共にPRして、製品ページに誘導する。
* ロングセラー定番製品であること
* シンプルな設計であること
* 価格の手頃感
* 汎用性の高さ

第2弾.製品についてのご意見、改善点などを収集する(一斉メール配信・Webフォームによるアンケート実施)

自社製品ユーザーや他社競合製品ユーザーもメルマガ登録者には存在するが、個々のはっきりとした使用製品情報は把握できていないので、メルマガ登録者全員に対して製品についての質問を送る。回答御礼・粗品進呈などは行わない。得られた回答内容は営業部、製品開発担当で情報共有を行う。

第3弾.「在庫処分セールキャンペーン」を実施。今後製造中止予定であることも告知する(一斉メール配信・Webフォームによるアンケート実施)

在庫一掃が目的。在庫の台数やラインアップに限りがあるので、その旨を伝えたうえで、値引きセールを行う。今後製造中止になることや、製造中止になっても保守サポート・サービスは今まで通り行われることを合わせて告知。サポート終了時期は未定。

第4弾.「在庫処分セールキャンペーン」終了後、保守サポート・サービスについてのご案内、製造中止の決定を告知する(一斉メール配信)

キャンペーン終了後、保守サポートや製造中止について再告知する。後継品は特になし。

在庫処分PRプラン – 実行結果

第1弾.製品の紹介、特長を告知する(一斉メール配信・クリック計測)

  • メイントピックスとしてではなく、3番手のトピックスとして配信。メール件名では対象製品の内容を含まずに一斉メール配信。配信のタイミングはいつも送っている時刻で送信。
  • クリック計測の結果は、今まで配信していても反応の無かったメルマガ登録者からのクリックが多数見受けられた。配信前に顧客データの追加登録を行ったのも功を奏したかもしれない。
  • 「メールで送られていたあの商品なのだけど~」と営業に直接連絡が来た

該当製品は新製品でもなく、以前から販売している既存製品の為、メインのトピックスとしては押し出しが弱い製品と思っていたため3番手のトピックスとして配信したが、配信したトピックスの中で一番のクリック数となった。この製品はウェブサイトにも長年製品情報を掲載していて、「定番」とも言える製品で目新しい情報ではないのになぜ?というのが、社内であがった率直な感想。

第2弾.製品についてのご意見、改善点などを収集する(一斉メール配信・Webフォームによるアンケート実施)

  • 該当製品の存在をはじめて知ったという回答が多数届いた。
  • 自社製品のユーザー、他社競合製品のユーザー、非ユーザーからも改善点に関する意見が寄せられた。
  • 「使ってみたい」といった意見や、詳細についての問い合わせもあった。

「定番」製品の存在自体を知らないメルマガ登録者(見込み客・既存顧客)が多く存在したことに驚いた。見積もり依頼や引合いにつながるお問合せも寄せられたことで、製品の紹介は新製品や新機能にこだわった内容ではなくてもPRして良いことがわかった。開発につながる好意的な意見が多く寄せられたので、営業部と製品開発担当とで情報共有を行い、製品の廃番是非についても再度見直し検討することになった。

第3弾.「在庫処分セールキャンペーン」を実施。今後製造中止予定であることも告知する(一斉メール配信・Webフォームによるアンケート実施)

  • 前回、前々回のメルマガ配信後、見積もり依頼や引合いにつながるお問合せが多数寄せられたが、在庫処分セールキャンペーンは予定通り実施した。
  • 前回の配信の時に購入検討中だった顧客からキャンペーン申し込みが来た。
  • 製造中止については、製品の見直し検討中の為、告知は行わなかった。
  • 保守・サポート情報を一緒に告知した。

前回、前々回と、定期的に製品情報の発信やWebフォームを使ったアンケートを行い、その続きとして在庫処分セールキャンペーン告知を行った。製品への興味度や認知度がアップしたタイミングでキャンペーン情報を発信したので、キャンペーンの集客効果につながり、在庫一掃できる数のキャンペーン申込みがあった。

他社競合の製品ユーザーで、今回のキャンペーンに申し込みをされた方もいた(ただし、置換ではなく、増設)。製品の廃番是非も含めた見直し検討となり、キャンペーン配信のタイミングでは結論が出ていなかったので、配信内容の一部を変更した。

社内では第一弾、第二弾の配信の反響が大きいので在庫処分セールキャンペーン中止の声が一部であったが、予定変更せずにキャンペーンを行い、当初予定していた在庫一掃の目的を達成できた。

第4弾.「在庫処分セールキャンペーン」終了後、保守サポート・サービスについてのご案内、製造中止の決定を告知する(一斉メール配信・クリック計測)

  • 予定通り、キャンペーン終了後にサポート期間・保守期間のご案内を行う。
  • 製造中止については、配信時までに結論は出ていなかったので、今回も告知はしなかった。
  • 第1弾で製品PRを行った時のクリック数には及ばなかったが、一定数取ることが出来た

製造中止については引き続き検討中だったので、第4弾の一斉配信を行うかどうか迷ったが、他に配信するトピックスがあったので、その一斉配信原稿の最終トピックスに追加して配信を行った。

最初に配信した製品紹介の配信時ほどのクリック数は得られなかったが、キャンペーンで購入されたユーザー、既存ユーザーを含め、一定数のメルマガ登録者のアクセスが確認できた。製品の次期開発については、依然社内で検討中だが、今回の配信で見直しのきっかけを作ることができた。

在庫処分PRプラン – 実行後の総評

  • 在庫一掃の目的を達成できた
  • PRプランを立てたことで、やるべきアクションがクリアになり、PRをスムーズに行えた
  • 製品PRの重要性を再認識した
  • 「新製品」「新技術」ではなくても、製品情報を発信すること意味があることがわかった
  • 定番製品のPRを見直すきっかけになった
    この企業様が行われたPRプランは、すべての製品に対して行えるプランではありませんが、「定番製品」「消耗品・パーツ」や、今まであまりPRしてこなかった製品などの掘り起こしに期待できます。

定番の自社製品や看板となっているサービスが、あまりにも当たり前すぎてPRしていないなんてことはありませんか。定番だからこそ、サポート情報や役立つ情報が豊富にあり、ご紹介できる事例も数多く存在すると思います。ご自身にとって自社製品は身近なものですが、見込客や顧客にとっては必ずしもそうとは限りません。「こんな使い方が出来るなんて知らなかった。ちょっと使ってみるかな。」とお客様に思っていただき、他社競合製品と差別化できるチャンスでもあります。

そして、久しくPRから遠ざかっている製品に隠れたニーズがあるかもしれません。製品群が多くてどれか一つを選定してメルマガ記事を書くなんてできない。という場合には、クリック計測やWebフォームを活用し、段階を踏んでPR出来そうな製品を絞り込むのも良い方法です。

隠れたニーズから生まれるニーズ

隠れたニーズを発掘することで、生まれるニーズがあります。今回の企業様のように、製品についてのご意見、改善点を収集した結果、現行の製品では要求を満たさないと感じられた見込客・顧客からご意見を頂くことができました。頂いたご意見を基に、製品を改良するべきか、または他の製品をご提案するべきか。新たなニーズに合わせ、商品企画につなげることや、ご提案製品の変更など多様な対応をもたらします。

最後に

多くの新しい情報に触れて生活を送っている毎日の中では、ほんの少し前に得た情報ですら、次々に入ってくる新しい情報に押し下げられ、記憶も段々と薄れてゆきます。発信した情報を記憶に残してもらい、必要な時に「そういえばどこかで見たような」と思い出していただく。そして、その製品やサービスに関するお問い合わせがスムーズに行えるシステムがあることが理想的です。

お客様の「ちょうど欲しかった」タイミングに合わせて情報を発信し、顧客にコンタクトを取ることができればベストですが、すべてのお客様お一人お一人のベストタイミングに合わせて行うことはできません。しかし、定期的に情報を発信することで、「ちょうど欲しかった」タイミングに情報が届く可能性を高めることはできます。

仮に配信した情報が、「ちょうど欲しかった」情報ではなくても、「次は欲しい情報が来るかも」と思い、次の配信を期待して頂けるメルマガであれば、お客様は配信を停止せずに購読し続けてくださいます。

また、今回ご紹介した企業様ではターゲット配信を断念されて一斉配信を行われていましたが、セグメントによる対象者絞り込みを行える場合には、さらに効果的に情報を発信することが出来ます。一斉配信ではぼやけてしまうPRメッセージも、ターゲット配信を行うことで、対象者に響く言葉でのアプローチや、配信のタイミングをターゲットに合わせて調整することができます。

「読者は誰なのか?」を意識し、製品のPRだけではなく、サポート情報やお客様の役に立つ情報をどうぞ発信してください。隠れたニーズを見つけ出すヒントがそこには隠れています。

  • 製造業BtoB企業のためのメールマーケティングガイドブック