人の注意力はその時々で変わる! カクテルパーティー効果とストループ効果
人の注意力は必ずしも一定ではありません。さまざまな影響で注意が反らされたり、反対に集中できたりする場合があります。今回はそのような注意力に焦点をあてた心理効果「カクテルパーティー効果」と「ストループ効果」について解説します。
この記事の目次
人の注意力は必ずしも一定ではありません。さまざまな影響で注意が反らされたり、反対に集中できたりする場合があります。今回はそのような注意力に焦点をあてた心理効果「カクテルパーティー効果」と「ストループ効果」について解説します。
興味があるものには自然と注意が向くカクテルパーティー効果
カクテルパーティー効果とは
「カクテルパーティー効果」とは、パーティーなどの周囲が騒がしい環境の中でも、自分の名前や自分に関係のあるキーワードや話題であれば、自然と聞き取ることができる現象のことです。カクテルパーティーとは、カクテルなどの飲み物と軽食が出される立食パーティーのことで、このようなパーティーでよく現れる現象であることから名付けられています。
なぜこのような現象が現れるのでしょうか。その理由は、人は注意を払っている情報を優先的に処理しているためだと考えられており、「選択的注意」と呼ばれるものの1つです。人の脳は、さまざまな情報でパンクしてしまわないように情報に優先度を付けて処理し、優先度の低い情報を処理しないようにしています。これにより、脳の処理能力以上の情報量にならないように調整しているのです。しかし、注意を向けていない情報に関しても、たとえその意味は理解できていないとしても、情報元の音自体は脳まで届いていることが実験によって実証されています。
カクテルパーティー効果のマーケティングへの応用
カクテルパーティー効果は、主にキャッチコピーなどで消費者の注意を引くための手法の1つとして応用されています。雑踏の中でもハッっと注意を引いてもらえるようなカクテルパーティー効果を持ったキャッチコピーは、ある意味理想とも言えます。最も分かりやすくて効果的なものの1つが、メルマガなどで顧客名で呼びかけてくるコピーでしょう。「〇〇でお困りの方にお知らせです」のような大衆に呼びかけるような文章ではなく、「鈴木様にお勧めしたい商品がこれです。理由は…」と、自分の実名が入った形のキャッチコピーを使っているパターンです。
メルマガの場合は送信先の名前が分かっている場合が多く、かつメールのタイトルや本文にその登録者名を埋め込むことが比較的簡単にできます。メルマガ以外でも、会員制Webサイトなどでもログインしていれば登録者名が分かるので同じような手法を使うことができる場合があります。
しかし一般的には、個人名は必ずしも分かるわけではありません。また、実名を使うのがいつでもベストな手法であるとも限りません。そういった場合に顧客の注意を引くためには、製品や対象としているターゲット顧客に関する具体的なキーワードをキャッチコピー内に入れておくことです。このことでカクテルパーティー効果が発揮され、自分に関係のある製品や興味のある話題を察知されやすくなります。
代表的なものが、年齢や性別、地域などの顧客属性情報です。「都会暮らしは疲れませんか?」よりも、「港区にお住まいの方に癒しをお届けします」とすれば、港区在住の方は目を留めてくれる可能性が高くなるでしょう。
ただしお気付きのように、キーワードが具体的になるほど目に留められやすくなる代わりに、今度は対象者の母数が少なくなります。どのようなキーワードで注意を引くのか、その具体性の度合いと対象者数のバランスで判断することも必要になります。キーワードには上記の顧客属性の他にも、興味の対象や生活スタイルなども有効です。
何となく違和感を持ってしまうストループ効果
ストループ効果とは
「ストループ効果」とは、言葉の意味と文字の色など、それが持っている意味と実際の状態に矛盾がある場合に人がストレスを感じてしまう現象です。1935年アメリカの心理学者ジョン・リドリー・ストループによって報告されました。ストループ効果という言葉自体はあまり馴染みがないかもしれませんが、その現象自体は脳トレなどではよく取り上げられていますのでご存じの方も多いと思います。
赤い字で書いた「赤」の文字、青い色で書いた「青」の文字など、それぞれ言葉の意味と色が同じ場合と、黄色で書いた「赤」の文字、黒い色で書いた「青」の文字など意味と色が異なる場合とで、それぞれその文字を読み上げる実験をすると、明らかに後者のほうが遅くなります。これがストループ効果です。2種類の異なった情報が干渉し合うことで、正しい認識を妨げていることがその原因です。
反対に、情報同士の干渉を抑えて一方の情報のみに集中することを「ストループ課題」といい、前述のカクテルパーティー効果はストループ課題を解決して、情報の干渉を抑えた状態だと言えます。
ストループ効果のマーケティングへの応用
ストループ効果をマーケティングに応用する際は、「ストループ効果を起こさせないように」=「意味と表現が矛盾していてストレスや違和感を持たせることのないような」メッセージやデザインを作成・発信することになります。
広告の表現の場合だと、「海辺のアクティビティの広告に山遊びを連想させるようなグラフィックを使っている」「安さをアピールしたいのに高級感のあるデザインを採用する」などの場合、消費者は表現全体に違和感を持ってしまい、たとえ文字で製品やサービス内容を説明できていても、理解に時間がかかったり違和感を持ったりしてしまいます。これにより広告効果が下がってしまう場合があります。
上記のような極端なケースは実際にはあまり見かけませんが、どことなく違和感を持つ広告表現を目にすることはあるでしょう。「しっかりと表現や意味に矛盾なく、しかも製品にマッチしている表現」というのは意外と難しいものです。違和感を持たせない表現や色と意味の組み合わせとして一般的なものには、次のような例があります。
● [性別と色] 男性:青や黒、女性:赤やピンク
● [危険度と色] 安全・進む:青や緑、危険・停止:黄色や赤
● [時間と方向] 左側:過去、右側:未来
● [文字の太さとイメージ] 太い文字:力強さ・男性的、細い文字:繊細さ・女性的
● [色と温度感] 暖色系:温かい・熱い、寒色系:涼しい・寒い
なお、ストループ効果を逆手にとって、あえて違和感を持たせるような表現を用いて注目を集める、という手法も採ることも場合によっては効果的です。
まとめ
● カクテルパーティー効果とは、騒がしい環境でも自分に関係のある
キーワードを聞き取ることができる現象
● 消費者の名前や興味対象などのキーワードを広告文に埋め込むことで、
カクテルパーティー効果を期待できる
● ストループ効果とは、表現と意味に矛盾があった場合に人がストレスを感じてしまうこと
● できるだけストループ効果を起こさないように、意味と矛盾しない表現を用いることが重要
人の脳の働きと注意力との関係は非常に興味深いもがあります。うまく活用して自社製品の拡販やマーケティングにつなげていきましょう。