錯覚やイメージを使って効果的に商品を訴求! シャルパンティエ効果とフレーミング効果
人は多くの場面で錯覚を起こします。そのような錯覚や人が受けるイメージを利用することで、自社の商品やサービスを効果的に訴求することができます。今回は人が起こす錯覚や受けるイメージの変化をマーケティングに活用する方法について解説します。
この記事の目次
さまざまな錯覚を起こす「シャルパンティエ効果」
シャルパンティエ効果とは
「シャルパンティエ効果」とは、大きく見えるものを「軽い」と感じ、小さく見えるものを逆に「重い」と錯覚してしまう心理現象のことです。1891年フランスの医師オーグスチン・シャルパンティエが、自らの著書の中で発表しました。少し分かりにくいかもしれませんので、シャルパンティエ氏が実際に行った実験でご説明します。実験では10cmと40cmの「大きさは違うが重さが同じ」の2種類のボールを用意し、被験者に持ち上げてもらいます。どちらが重かったのかを訊いたところ、「小さいほうが重い」と答えた人が多くなりました。これは、「普通なら小さい方が軽いはず」なのに、持ち上げてみると同じような重さであったため、「小さい方が重い」と感じてしまうことから起こる錯覚です。
シャルパンティエ効果は見た目の大小だけではなく、人が持っているさまざまなイメージにも作用します。例えば鉄5kgと発泡スチロール5kgでは、聞いただけでも鉄5kgのほうが重そうだというイメージを抱いてしまいます。これもシャルパンティエ効果が作用した結果です。シャルパンティエ効果は元々はこのような重さと体積の関係の錯覚によるものですが、さまざまなイメージとそれに伴う錯覚として作用するので、それをマーケティングに応用することができます。
マーケティングへの活用例と活用ポイント
シャルパンティエ効果のマーケティングへの応用には次のような例があります。具体的でより良いイメージを伝える
さまざまな量を、具体的でより良いイメージを持ってもらうための表現として活用できます。例えばビタミンCの含有量が1000mgあるサプリメントがあるとします。「1粒でビタミンCを1000mg摂れる!」と言ってもそれが少ないのか多いのかよく分かりません。そこで「レモン50個分のビタミンC!」と置き換えると、具体的なイメージが付きやすくなります。加えて、レモンに多くのビタミンCが含まれていることは広く知られているので、「レモン50個分=たくさん摂れる」と感じてもらうこともできます。より安くまたは高級に見せる
月額利用料10,000円のサービスがあったとします。年間利用料:120,000円、1ヶ月利用料:10,000円、1日当たり利用料:約330円になりますが、支払金額は同じでも表示される金額が低いと安く感じてしまいます。1日当たりで表現することで「安さ」を訴求することができます。しかし、あまり安価な表示金額だと逆に品質や信頼性に疑問を抱かれてしまう可能性があります。例えば富裕層向けの高品質を謳うサービスであれば、年間で表現した方が良い場合が出てくるかもしれません。 シャルパンティエ効果を活用する際に注意したいのは、一般的にイメージできないものや、そのイメージに適していない例えを用いないことです。上記の例で「レモン」を「ブドウ」に置き換えた場合、シャルパンティエ効果が現れないことはご理解いただけると思います。また定量的なもの以外を例えても明確なイメージが持てないので効果がありません。「レモン50個分の幸せ」と言われてもレモンと幸せの関係があいまいで、人によって幸せの定義が異なるのでなかなかピンとこないでしょう。表現によって印象が大きく変わるフレーミング効果
フレーミング効果とは
フレーミング効果とは、同じ内容や同じことを表現していても、その表現の仕方によって感じるイメージや捉え方が異なってしまうような心理効果のことを言います。フレーム(frame)は、元々額縁や枠組みを表す単語。心理学者・行動経済学者のダニエル・カーネマンおよび心理学者エイモス・トヴェルスキーが、1981年に科学雑誌「サイエンス」上で提唱した考え方です。両氏が実施した「アジア病問題」という実験が有名です。この実験では、「死者が最大600人に達するかもしれないアジア病という疫病の対策を講じる」という想定で、「200人助かる」対策と「誰も助からない確率が2/3」の対策の2つを被験者に選択させた場合、前者を選択する場合が多くなりました。また、「400人死んでしまう」対策と「誰も死なない確率が1/3」の対策を比較した場合には、後者がはるかに多く選択されました。
選択肢として提示した2つの対策の意味それぞれ同じです。しかし、人は利益を意識すると損失を回避しようとし、反対に損失に着目すると利益を得ようとする心理的傾向が働くためにこのよう結果になると言われています。「200人が助かる」という利益を表現すると、「誰も助からない」という損失を避け、反対に「400人が死ぬ」という損失を表現すると、「誰も死なない」という利益を追求しようとする傾向が顕著になります。フレーミング効果はこのように「実は同じ内容なのに表現によって印象が変化する」ことです。上記の実験例のように利益と損失だけではなく、さまざまな対象や基準に適用されます。
マーケティングへの応用例
フレーミング効果のマーケティングへの応用は、主に効果的なキャッチコピーなどを考える際に有効です。実際の応用例には次のようなものがあります。メリットを訴求
「ユーザーの90%で効果が現れています」「ユーザーの10%で効果が現れていません」
まったく同じ事実を表現していますが、上のほうが「より効果の高い商品」だという印象を受けます。たとえ上記よりも満足度が低い場合(例えば70%)でも、商品の効果を訴求する場合は利益を強調するほうが有効です。
損失予防を訴求
「早めに積み立てることで老後安心して生活できます」「今積み立てを始めないと老後破産の恐れがあります」
損失やリスクを防止する商品やサービスの場合は、利益よりも損失予防に焦点を当てることで訴求効果が高まります。上記の例ですと「老後破産の恐れ」というリスクを明示することで、下段のほうがより印象に残りやすくなっています。以上が基本的なフレーミング活用のテクニックと言えるものですが、他にも表現を工夫することで訴求効果を高めるようなさまざまな応用が考えられます。
「無料」の効果を活用
「今なら3カ月無料」「2つ買えば1つ無料」など、「無料」という言葉は強く人を惹きつけます。理由は「無料=損失ゼロ」を意味するからです。おとり商品を設定する
商品ラインナップが、・商品A 500円
・商品B 300円
だった場合、(それぞれ商品価値が値段相応だとすると)安いほうの商品Bが売れやすくなります。しかしこれに「商品X 700円」を追加して
・商品X 700円
・商品A 500円
・商品B 300円
というラインナップにすると、商品Aの価格が500円で変わらないのに、相対的に安く見えるために最も売れやすくなります。この方法は「一番売りたい商品」(例の場合は商品A)を売るための手法としてよく活用されています。
まとめ
- シャルパンティエ効果は重さと大きさの関係をはじめとするさまざまな錯覚を起こす心理効果のこと
- 同効果を応用することで、具体的でより良いイメージで数量を伝えたり、より安くまたは高級に見せたりすることができる
- フレーミング効果は、同じことでも表現によってイメージが大きく変わる心理効果のこと
- 商品やサービスのメリットまたは損失予防効果をうまく訴求したり、売りたい商品を効率的に販売したりしたい場合など、さまざまな応用ができる