心地良さと安心感が商品購入のポイント!ディドロ効果とザイオンス効果
さまざまな要因で消費者は消費を購入しますが、居心地の良さや安心感もその1つ。そのような心理を表したものの代表が「ディドロ効果」と「ザイオンス効果」です。今回はこれらの効果のマーケティングへの活用事例やその際のポイントなどをご紹介します。
この記事の目次
買い揃えを促すディドロ効果
ディドロ効果とは
ディドロ効果とは、自分の生活の中に「新しい物や気に入った物」が入り込むと、それに見合う物を買い揃えたくなる心理のことを言います。文化人類学者であるグラント・マクラッケンが、フランスの思想家ドゥニ・ディドロのエッセイに書かれていた内容にちなんで名付けました。マクラッケンが参照したエッセイには、ある友人から高級なガウンをプレゼントされたので古いガウンを捨てたところ、自分の持っているものが新しいガウンに合わないと感じ始めてしまい、多くのものを新たに買い求めた結果、大金を浪費してしまった、というエピソードが書かれていました。ディドロ効果は、さまざまな物に一貫性を持たせたいという「一貫性の原理」に基づくものです。人は行動や発言、態度などを決めた後に、その「整合性を保ちたい」と考えるものです。マーケティングなどへの活用事例
ディドロ効果のマーケティングへの活用事例には次のようなものがあります。ブランドの統一
ファッションブランドでは、ブランド全体に統一感を持たせ独自の世界観を構築しています。消費者は同じブランドを購入することで自分の周りの世界観も統一させようとして、買い揃えをしていきます。その他にも、例えばAppleの製品においては強いブランド力が働いているので、MacBook やiPhone、iPadなどさまざまな機器を揃えていく傾向があります。いずれも多くの場合、最初に購入した商品が気に入ったためにそれに見合う物で統一したいという欲求が働いた結果です。セット商品、シリーズ商品
ブランド統一と考え方は似ていますが、商品自体がセットやシリーズになっている例です。各種インテリアが統一的なデザインでシリーズになっていたり、シルバニアファミリーシリーズのように、人形だけではなく家具や住宅なども同じ世界観で統一させたりすることで、一貫性の原理を働かせようとしています。ゲームのアイテム
ゲームも世界観が重視される商品・サービスと言えるでしょう。アイテムなどを揃えることで、プレイヤーが有利に進めることはもちろん、統一感を持たせたアイテムを何種類か用意することで、消費者のディドロ効果を刺激し、課金や有料ガチャなどでマネタイズする仕組みです。ディドロ効果活用のポイント
ディドロ効果を活用する際のポイントとしては下記のようなものがあります。- しっかりと自社ブランドの世界観を構築し市場に発信する
- 効果的なシリーズ商品、セット商品を開発する
- 初回購入時のハードルを下げる施策を実施する
安心感を与えるザイオンス効果
ザイオンス効果とは?
最初に目にした時や始めて会った時はそれほど気にならなかったのに、何度か接点を持っている間にいつの間にか気になってきてしまう。そのような経験をされた方もおられるのではないでしょうか。最初は興味がなくても、何度か触れている間にその対象に好感を持つようになってしまう、そのような現象は「ザイオンス効果」と呼ばれています。アメリカの心理学者ロバート・ザイオンス氏が1968年発表した論文で提唱。日本語では「単純接触効果」や「熟知性の原則」とも呼ばれます。同氏がその効果を確かめる実験では、大学生を対象に、まず卒業アルバムから12枚の写真を抜き出し、ランダムに見せます。その際写真によって見せる回数を変えます。そして最後に12枚全部の写真を見せて、そのうち最も印象が良かった物を選ばせると、見た回数が多かった物が印象が良い、という傾向があることが分かりました。
マーケティングでの活用
限度や条件はありますが、接点が多いほど印象が良くなるので、さまざまな応用が可能です。BtoBマーケティングでの代表例はメールマガジンです。メールマガジンは、相手の迷惑にならない程度の間隔で情報提供などを一定回数以上行うことで、相手に好印象を持って貰うことが可能です。もちろんその内容が相手に興味を持って貰うものでなければ、却って逆効果になってしまう場合もありますので注意が必要です。その他にも、新規会員登録者などへのステップメールも同様の効果が期待できます。各種の広告も同様の効果を生みます。テレビCMは言わずもがなですが、Webマーケティングにおけるネット広告系でも同じです。検索キーワードや閲覧したサイト情報を元にしてユーザーに広告を表示する「リマーケティング広告」や「リターゲティング広告」はその代表例でしょう。その他にも、ブログやSNSから、定期または不定期で情報発信することもザイオンス効果をもたらします。また、マーケティングではありませんが、「足しげく通う営業」が相手に好印象を持たれやすいのも、同様の効果によるとことが多いと推測されます。
活用のポイント・注意点
しかし、ザイオンス効果も万能ではありません。元々好印象を持たれていない相手に対しては、ザイオンス効果は働きません。そのような相手に何度会っても、むしろ評価を下げてしまうことになるでしょう。また、より効果的にザイオンス効果を発揮するためには、ある程度短期間に何度も接点を持つことが有効です。ザイオンス効果が有効に働く接触回数は7~10回だと言われています。7回を超えると購買意欲が上がることが多く、反対に10回以上接点を設けてもそれ以上印象は変わらないと言われています。もちろん回数や頻度が多すぎると、対象の商品に対する印象とは別に、単に「迷惑な行為」だと感じられてしまうでしょう。
まとめ
- ディドロ効果とは、新しい気に入った物ができるとそれに見合う物を揃えたくなる心理のこと
- マーケティングへの応用例としては、ブランドの統一やシリーズ商品などがある
- ブランドやシリーズ商品の統一感や、初回購入時のハードルを下げることがディドロ効果活用のポイント
- ザイオンス効果とは、頻繁に接触するものごとに対して好感を持つ傾向のこと
- メールマガジンやSNSなどでの継続的な情報発信や、リターゲティング広告などに応用されている
- 元々印象が悪いものに対しては効果がなく、効果が出る接触回数にも限度がある