どんな基準で商品を選んでる?アンカリング効果とウィンザー効果
人が購入する商品を選ぶ際、多くの方が「自分の好みや基準で選んでいる」と思っているでしょう。しかし実際は、商品を選ぶ際にはさまざまな情報の影響を受けています。今回は、商品選択の際に消費者はどのような情報に影響を受けやすいのかを解説します。マーケティングや販売施策立案の際にぜひ参考にしてください。
この記事の目次
先の情報が人の行動・判断に影響する「アンカリング効果」
アンカリング効果とは
「アンカリング効果」とは、先に与えられた情報がその後の行動や判断に影響を及ぼすことです。錨を使って船をつなぎとめる「Anchoring」に由来しており、先に見た情報に心理的に束縛されることを表しています。心理学者でもあり行動経済学者でもあるダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーの認知バイアス(先入観などにより合理的な判断が妨げられること)に関する共同研究の中で発見されました。アンカリング効果を実証する実験では、ルーレットで出た数によってその後のまったく無関係な質問(国連加盟国のうちアフリカ諸国が占める割合は何%か?)に影響が出たり、自分の社会保障番号下二桁を記録させた後にオークションに参加すると、記録した下二桁が大きい方が小さい場合よりも約50%入札額が高くなったりすることが実証されました。
アンカリング効果の例
アンカリング効果の典型的な例は、「通常価格<50,000円>のところ本日限り、50%OFFの<25,000円>!」というようなオファーまたはキャッチコピーでしょう。最初の「50,000円」という価格にアンカリングされてしまい、「半額の25,000円なんてずいぶん安い!」という印象を持ってしまいます。また、「今から3時間後にそちらに到着します」と言われて、実際には2時間後に到着した場合、「早く着いたな」という印象を持ちますが、事前に「今から1時間後にそちらに到着します」と言われて2時間後に着いた場合は、「遅い」と感じるでしょう。これらがアンカリング効果の典型的な例です。
アンカリング効果の応用
その他にもアンカリング効果の応用としては、飲食店などでのコースメニューの例があります。メニュー上で最初に高価なコースを提示しておき、その後に、本当に売りたい通常のコースを提示することで割安感が出て、通常コースに注文が入りやすくなります。また、間接的な応用例としては、ディスカウントショップや100均ショップなどが挙げられます。これらのショップでは、日用品などを非常に安価で販売しているので、「価格が安いショップだ」という印象を持たれます。これにより、その他の他店とあまり価格差のない商品であってもお得な印象を持たれて売れ行きが良くなります。安価で販売している商品の中には、原価割れしているものもありますが、他商品の売上によって十分に元が取れる仕組みです。
アンカリング効果活用時の留意点
アンカリング効果を活用する際に留意したいのは、まず、相手がその商品の相場を知ってる場合には効果がないことです。アンカリング効果を狙って相場と開きのある価格帯を提示すると逆に購買意欲を削ぐ結果になる恐れがあります。また、通常価格と現在の販売価格を二重で表示する場合、通常価格での実際の販売実績がなければ景品表示法における二重価格に相当し、罰則対象になる恐れがあります。第三者の意見を尊重するウィンザー効果
ウィンザー効果とは?
「ウィンザー効果」とは、「利害関係のない第三者が発信した情報が信憑性がある」と感じる心理効果のことです。その商品を販売する企業の発言は、販売企業の利益を優先しているものだと解釈されやすいものです。しかし利害関係のない第三者は、その発言によって利益を得ることのも損失を被ることもないので、客観的で信頼できるはずです。このような観点から、第三者の発言を信用するのかウィンザー効果です。アーリーン・ロマネスの小説「伯爵夫人はスパイ」に登場するウィンザー伯爵夫人の言葉「第三者の褒め言葉がどんな時も一番効果があるのよ」、がウィンザー効果の名前の由来だと言われています。ウィンザー効果の応用例
ウィンザー効果は、近年盛んに行われている口コミマーケティングやSNSマーケティングに応用されています。口コミで代表的なのは食べログなどのレビューサイトでしょう。そこでの評価が店舗の来客数や売上に大きく影響します。また、ECサイトや価格比較サイトなどでのユーザーレビューを参考にする消費者も多くなっています。もちろん消費者が口コミを100%信用するわけではありませんが、5段階評価などの平均評価ポイントなどが可視化されるために、事業者側としてはレビューに対してナーバスにならざるを得ない状況でもあります。従って事業者は、それらのサイトで少しでも良いレビューを書いてもらうために努力と工夫をしています。
また、ユーザーボイスや導入事例なども口コミマーケティングの手法の1つと言えます。対象商品の購入者は、販売元の事業者と利害関係のない1ユーザーですのでその発言は第三者的なものと解釈されます。導入事例は企業向けの製品やサービスを提供する事業者が用いる口コミマーケティング手法として盛んに用いられています。
また近年、TwitterやInstagramなどのSNSから発信される商品情報にも消費者は敏感です。影響力の高いインフルエンサーなどにいかに自社商品のポジティブな情報を発信してもらうかに事業者は力を注いでいます。レビューなどとは違い、インフルエンサーと企業のコラボレーション企画などを実施するケースも少なくありません。その場合はいかに第三者的な立場で情報発信できるかがポイントとなるでしょう。
ウィンザー効果活用時の留意点
ウィンザー効果を狙った口コミマーケティングで注意したいのが、ステルスマーケティングと呼ばれるものです。これは商品の販売実事業者から頼まれた人物が、第三者を装って良い評価につながるような口コミを投稿する行為です。また、事業者から対象商品の提供や報酬を受け取っていたにもかかわらず、それを隠してSNSでその商品を取り上げるたりする行為も同様です。これらの行為は今のところ違法とまでは判断されるケースはありませんが、世間に知られると社会的信頼を失うことになりますので、避けなければなりません。まとめ
- アンカリング効果とは、先に与えられた情報がその後の行動や判断に影響を及ぼすこと
- 最初に高額商品を見せておいたり、逆に安売りなどで安い印象を与えておいたりすることで商品を販売しやすくなる場合がある
- ウィンザー効果は、第三者の意見が尊重されやすい傾向のこと
- ウィンザー効果をうまく利用すれば、口コミやSNSを使って効率良くマーケティングできる