<行動心理学でひも解くマーケティング> ダメと言われると余計見たくなる!カリギュラ効果とツァイガルニク効果
人の行動の内面的な動機を心理学的に説明してくれる「行動心理学」は、マーケティングのさまざまな場面で応用されています。その例がカリギュラ効果およびツァイガルニク効果とその応用です。どのような効果でどうマーケティングに活用されているのか解説します。
この記事の目次
禁止されると余計に見たくなる!マーケティングに使えるカリギュラ効果
なぜ禁止されると見たくなるのか?
人は「見るな!」と言われるとむしろ余計に見たくなってしまうものです。日本では古くから、鶴の恩返しや浦島太郎などの昔ばなしでも同様のことが語られてきました。何事かを禁止されると余計にそのことが気になる心理現象は「カリギュラ効果」と呼ばれています。過激な表現で上映禁止になった映画「カリギュラ」が、逆に世間の注目を集めてしまったことに由来しています。人は本来自分の行動は自分で決めたいという欲求があります。そこである行動を禁止されたり制限されたりすると、その思い通りにいかないことに対して大きなストレスを感じてしまいます。その結果、ストレスを何とか解消しようと上記のような心理が生まれてくるのです。日常生活の中でも、ダイエットや禁煙の邪魔をするのがこのような心理なのです。
マーケティングへの応用
このようなカリギュラ効果は、マーケティングやメディア上のさまざまな場面で活用されています。例えば商品やイベントのキャッチコピーで「〇〇な人以外は絶対使わないでください」や「□□な方は来場お断り!」の記載があると、逆に何か特別な商品や内容を期待してしまう方も多いのではないでしょうか。キャッチコピー以外でも、例えば特別セールの価格を公開せずに登録者のみに開示したり、ある時期になって初めて公開したりすることで、より強い興味を持っていただくことも可能になります。その他、言ってはいけないことをあえてブザー音などで隠しながら放送するテレビ番組も、「隠されていること」に着目したカリギュラ効果を期待する手法でしょう。
実際にカリギュラ効果をマーケティングに応用した例としては、ホラー映画の「決してひとりでは見ないでください」や、基礎化粧品「初めての方にはお売りできません」、スマホゲーム「絶対にやるなよ」などのキャッチコピーが有名です。
カリギュラ効果を効果的に使うために
カリギュラ効果はさまざまな応用が利きそうな便利な心理効果ですが、上記の通り消費者にストレスをかけることになるので、使い方には注意が必要です。まず1つ目があまり強すぎる禁止や制限にしないこと。強すぎると好奇心よりも反発心を買ってしまったり、条件がクリアできそうもないので諦められて興味を持たれなくなってしまったりする恐れがあります。「どうしてなの?」と少し疑問や反発できる程度の禁止や制限にしておきましょう。もう1つ気を付けたいのが、禁止する理由を説明しておくことです。この禁止する理由によって自社製品をうまく訴求することができるようになります。上記の映画や化粧品などの応用例を見ると、うまくその効果を使って差別化を図ろうとしていることがお分かりいただけると思います。
じらしのテクニック、ツァイガルニク効果
お預けされるとより記憶に残る
カリギュラ効果が「禁止」の効果だとすると、ツァイガルニク効果は「お預け」や「じらし」の効果です。人は「しっかりと完了した物事よりも、未完了や不完全な物事のほうが印象に強く残る」という心理効果を利用したもので、ロシアの心理学者ツァイガルニクが実際の実験によって明らかにしました。実験では、さまざまな課題を与えそれを最後まで終わらせたグループと、途中で強制終了させたグループとで課題の内容をどれだけ記憶しているかを比較。その結果、途中終了させたグループのほうが約2倍課題の内容を覚えていた、というものでした。日常生活において、中途半端になっていることはいつまでも「もやもやした感じ」が続くことがありますが、それがツァイガルニク効果です。
マーケティングへの応用
このツァイガルニク効果も、さまざまな場面で応用されています。最もよく遭遇するのが、テレビで「続きはCMの後で…」「続きはまた来週…」という場面。ちょうどいいところで中途半端に終わってしまうともやもや感も大きくなりますね。ツァイガルニク効果のマーケティングなどへの応用例としては、Webサイトなどで、途中まで無料で誰でも閲覧できるようにしておき、途中からは会員登録などが必要になる、というのが最も典型的でシンプルでよく見かける例でしょう。
その他にも、メルマガで最後の結論や重要な情報を次回に持ち越したり、Webサイト上で、ページ最上部にお題(テーマ)を出して、「正解はページ最後に」などのやり方を用いたりするのもツァイガルニク効果によってコンテンツを最後まで読ませようとする意図です。また旅行業界では、旅行先で場所や日程が合わなかったイベントをあえて紹介することで観光客に未完了感を与え、リピートを狙うという方法が採られる場合もあります。
新製品を発売する際にも、ツァイガルニク効果を用いることで効果的に興味喚起することができます。新製品などの情報は、できるだけ早く広く公にしたくなるものです。しかし逆転の発想で、情報を少しずつタイミングを計りながら小出しにしたり、さらにカリギュラ効果も組み合わせて公開する相手を限定したりすることで、より大きな興味を喚起できマーケティングの精度を上げることが可能になります。詳しい説明を省略して、新製品の一部分の映像と簡単なコピーのみ入れて公開する「ティザー映像」は、これらの効果を最大限活用したものと言えるでしょう。
ツァイガルニク効果を活用する際もあまりやり過ぎると感情を損ねるので、消費者が納得できるレベルでとどめておくことがポイントです。
まとめ
- 禁止されると余計に気になるのが「カリギュラ効果」
- カリギュラ効果は、利用者や閲覧者を限定した商品/イベントなどにおいて効果的に活用されている
- 効果的活用するには、相手が少し疑問や反発を持つ程度の禁止にとどめておくことが必要
- 肝心な部分をすぐには知らせずに中途半端にしておくことでより強い印象を与えるのが「ツァイガルニク効果」
- この効果を活用し、途中まで情報開示して重要部分は後に知らせたり、情報を小出しにしたりすることで興味を喚起することができる