ひたすら褒める「イエスアンド法」で
とにかくアイデアを集める
最も頻繁に使われているアイデア創出法であるブレーンストーミングは、出てきたアイデアを否定せずにどんどんアイデアを集める方法です。イエスアンド法は、「否定しない」だけではなく、さらに「ひたすら褒める」ことでアイデアを出していく手法。イエスアンド法ではどのようにしてどんなアイデアが生まれるのか、また活用のポイントなどについて解説しました。
この記事の目次
最も頻繁に使われているアイデア創出法であるブレーンストーミングは、出てきたアイデアを否定せずにどんどんアイデアを集める方法です。イエスアンド法は、「否定しない」だけではなく、さらに「ひたすら褒める」ことでアイデアを出していく手法。イエスアンド法ではどのようにしてどんなアイデアが生まれるのか、また活用のポイントなどについて解説しました。
イエスアンド法とは
「イエスアンド法」とは、新しいアイデアをより多く集めたい時に活用されるフレームワークです。人のアイデアに対して「イエス」と前向きに受け入れ、「アンド」でさらにアイデアや情報を付加していくことで次々にアイデアを集めていく手法です。
自分が出したアイデアが前向きに受け入れられ、しかも褒められるのでアイデアを考えることが楽しくなることから、コミュニケーションの場でより生産的な議論ができるようになります。また、アイデアにさらにアイデアを付加していくことで内容が洗練されていき、より具体的な構想などに発展させることができるのもイエスアンド法の特徴です。
具体的には次のような手順で進めていきます。
●議論の前にあらかじめテーマを決める
●上記のテーマに関するアイデアをまず1つ出す
●出てきたアイデアの良いところを指摘して(褒めて)、さらに発展させるためのアイデアを出す
上記のアイデアを出す箇所を繰り返して、一般的には5つ程度のアイデアが出るところまで続けます。
例えばテーマを「SNSマーケティングの効果を向上させる」とすると、
「SNSマーケティングの目的を明確にする」というアイデアに対して、
さらに、「ターゲットを明確にする」
さらに、「ターゲット像を調査する」
さらに、「同じようなターゲット向けの成功事例を調査する」
さらに、「上記を参考にしてプランを考える」
このようにアイデアが展開していくことができます。
イエスアンド法の課題
しかし、イエスアンド法には次のような課題もあります。まず、「アイデアを褒める」ことに力点が置かれているので、どうしても批判的な見方がおろそかになります。そのため、そのアイデアの欠点を見逃すことや、あまり良くないアイデアを元に話を進めざるを得ないようなことが発生してしまいます。
また、すべてのアイデアを採用していくことで論点が徐々に曖昧になっていき、アイデアは広がるものの、肝心な課題解決に結びつきにくくなることも発生します。
イエスアンド法活用のポイント
イエスアンド法を有効活用するには次のようなことがポイントになります。
自由にアイデアが出せる場所や雰囲気を用意する
参加者が自由にアイデアを出しやすいように、できるだけ静かでリラックスした場所を用意した方が良いでしょう。飲み物を片手に進めるのも良いかもしれません。進行者はできるだけコミュニケーションに長けた人物が担い、参加者もネガティブな発言が多い方はできるだけ参加させないようにした方が良いでしょう。
また、組織風土などにもよりますが、参加者に上下関係がある場合は自由な発言が難しくなるケースもありますので配慮が必要です。
目的や背景を参加者が理解する
あるテーマに沿った課題解決のためのアイデア出しがイエスアンド法の実施の目的です。その目的や実施の背景になる課題などを参加者全員が十分に理解しなければ、「解決に向かった良いアイデア」は生まれません。目的や背景を説明・共有した上で、実際のアイデア出しを始める必要があります。
突飛なアイデアが良いとは限らない
イエスアンド法はアイデアのユニークさを競うのが目的ではありません。あまりに突飛なものは避けながらも、新しいアイデアを模索するようなバランス感覚が参加者全員に求められます。
マーケティングなどへの応用
イエスアンド法は、さまざまな課題解決のためのアイデア出しに広く応用できます。マーケティングにおいては、例えば先ほどの例のように、マーケティング施策上の問題点を改善・解決したり、新しいキャンペーンのアイデアを考えたりする際などに有効です。
さらに、自社製品やサービスの改善につながるアイデアや、新サービスのアイデア創出にも応用できるでしょう。上記の活用時のポイントに留意しながらうまく運ぶことができれば、画期的で深みのあるアイデアを数多く得ることが可能です。
セールストークへの応用
イエスアンド法は、同じような手法であるイエスバット法と併せて、営業パーソンが使うセールストークに以前から活用されています。いずれもクッション話法と呼ばれるもので、お客様から否定的な意見を頂いた際に切り返す話法です。
どちらも、まず相手の意見を一旦受け入れます(Yes)。その上で、イエスバット法ではその意見とは別の視点や代替案(But)など用いて新たに提案する方法、イエスアンド法は、相手の意見を肯定した上で、それをさらに発展したかたち(And)で相手を説得する方法です。例を挙げてみましょう。
お客様の 「この製品は少し高いのでは?」の問いかけに対して、
●イエスバット法の場合
「確かにそうですね。でも、他社の同品質の製品と比較すると◯○だけ安いんですよ」
●イエスアンド法の場合
「確かにそうですね。でも高いのにはそれなりの理由があります。通常はあまり使われていない○○という素材を採用しているからなんです」
実際には取り扱う製品やサービスによって切り返しで使えるトーク内容は異なります。しかし、いずれにしても相手の否定的意見をうまく利用して、再提案・説得に結びつけることができます。
まとめ
●イエスアンド法とは、出てきたアイデアを積極的に受け入れ、さらにそれにアイデアなどを付加していくことでアイデアを集める手法
●生産的な議論展開ができたりアイデアを付加することで洗練されたりしていくなどのメリットがある
●自由にアイデアが出せる場を用意したり、目的や課題を共有したりすることが活用のポイントとなる。
●イエスアンド法は、マーケティングにおける課題解決やセールストークにおけるクッション話法などへ応用されている
イエスアンド法は、単にアイデアを出すというだけではなく、どんどん深みのあるアイデアが出てくることが期待できる手法でもあります。そのためには少し議論のコントロールが必要な場合もありますので、ファシリテーター(司会者)の技量がある程度必要であることも考慮しなければなりません。