さまざまな観点から考えてみる「シックスハット法」
会議では色々な意見が出るものの、意見がまとまらず収拾がつかなくなる場合があります。一方で、同じようなアイデアばかりで煮詰まってしまうようなケースも発生します。そのような場合には「シックスハット法」が有効かもしれません。「参加者がそれぞれ違う色の帽子をかぶって会話」するシックスハット法は、少しゲーミフィケーションの要素も取り込みながら、効率的にアイデアを抽出できる手法。どのような手法なのか詳しく解説します。
この記事の目次
会議では色々な意見が出るものの、意見がまとまらず収拾がつかなくなる場合があります。一方で、同じようなアイデアばかりで煮詰まってしまうようなケースも発生します。そのような場合には「シックスハット法」が有効かもしれません。「参加者がそれぞれ違う色の帽子をかぶって会話」するシックスハット法は、少しゲーミフィケーションの要素も取り込みながら、効率的にアイデアを抽出できる手法。どのような手法なのか詳しく解説します。
シックスハット法とは
「シックスハット法」(Six Thinking Hats)は、マルタ島出身の心理学者・医師であるエドワード・デボノ博士が提唱した「水平思考」(Lateral Thinking)の手法の1つです。「シックスハット思考法」、「6色ハット思考法」などと呼ばれる場合もあります。水平思考とは、同じくエドワード・デボノ博士が提唱した思考法です。従来の論理的な分析や問題を深掘りしていくような思考法である「垂直思考」(Vertical Thinking)に対して、常識にとらわれずにさまざまな視点から自由に発想して問題解決を試みる方法です。
垂直思考は、数学の問題のように必ず正しい答えが存在しているような課題の解決には向いていますが、ビジネスにおける課題のように「答えは1つではない」というような問題には不向きです。一方、水平思考は、問題を多視点でとらえて、今までにない発想を生み出すことが期待できるため、ビジネス上の課題解決に向いていると言われています。そのような水平思考を実践するための1つの方法がシックスハット法です。
シックスハット法の実施方法
シックスハット法では、参加者が6色の異なる色の帽子をかぶり、その帽子の色に応じた視点で意見を述べます。帽子の色は白、赤、青、緑、黄、黒の6色。帽子の用意が大変だったり、かぶることに抵抗があったりする場合は、同じ色のカードを用意するなどして代用する場合もあります。各色の視点は以下となります。
白色の帽子:客観的・中立的立場
白色は客観的・中立的な立場で意見を述べます。事実や数値を参照したり、客観的なデータを集めたりする役割を担います。あくまで客観的な立場なので、仮説の立案や新たな提案などは行いません。
赤色の帽子:感情的・直感的立場
白色とは反対に、赤色は感情的・直感的な判断で発言します。客観的な根拠や論理的な理由は不要。感じたこと、思いついたことをどんどん意見していきます。
青色の帽子:分析的・俯瞰的立場
青色は、分析的で俯瞰的な立場で参加します。出されたアイデアを見ながら議論全体をコントロールしたり、最後に意見をまとめたりするなど、全体のスムーズな進行を担う役割です。
緑色の帽子:革新的・創造的立場
これまでの前提条件や常識にとらわれずに、新たな選択肢を提示するのが緑色の役割です。アイデア発想法としてのシックスハット法の中心的な役割を担うのがこの緑色です。いきなり革新的なアイデアを出すのは難しいものですが、これまで出されたさまざまな視点の意見を元にしてアイデアを膨らませるようにします。
黄色の帽子:積極性・希望的立場
黄色は、とにかく状況をポジティブにとらえて、積極的かつ楽観的な意見やアイデアを出していきます。ただし赤色とは違って論理的な根拠があることが前提となります。メリットや利点なども合わせて述べることができればベストです。
黒色の帽子:批判的・消極的立場
批判的な視点で、問題やリスクを洗い出す立場が黒色です。感情的な意見ではなく、論理的な観点で、欠点や短所、リスクなどを洗い出していく立場です。
発言時間や発言する色・順番は特に決まっていませんので、実際に議論するテーマによって予め決めてから臨む場合や、その場でファシリテーターがコントロールする場合があります。
シックスハット法の効果
シックスハット法を活用すると次のような効果が得られます。
偏りなくさまざまな視点からアイデアを出すことができる
それぞれ異なった立場から意見やアイデアが述べられるので、偏りなくさまざまな視点のアイデアが集まります。
創造性に富んだユニークな解決策を生み出すことができる
さまざまな視点から得られる多くのアイデアによって、これまでにないユニークな発想の解決策を導き出すことが可能です。
会議時間が短縮できる
事前に立場を決めて議論を進めるため、議論が曖昧になったり、感情的になったりすることなくスムーズに話が進みます。
マーケティングへの応用
シックスハット法はさまざまな課題解決に対応できるため、マーケティングにも応用可能です。「マーケティング戦略を策定する」という課題を例に、各色の視点で課題解決へのアプローチを考えると次のようになります。
●白色の帽子:客観的・中立的立場
市場調査や競合分析を通じて客観的なデータを収集。市場トレンドや競合の状況を把握する。
●赤色の帽子:感情的・直感的立場
製品やキャンペーンの感情的・直感的な反応を評価。消費者の期待に応えるような戦略を考案する。
●黒色の帽子:批判的・消極的立場
競合分析などにより市場リスクを特定。リスク対策を練る。
●黄色の帽子:積極性・希望的立場
新たな市場機会と未開拓のセグメントを探し、新製品や新市場戦略を検討する。
●緑色の帽子:革新的・創造的立場
クリエイティブな広告キャンペーンやブランドメッセージを開発するなど斬新なアイデアを生み出す。
●青色の帽子:分析的・俯瞰的立場
全体の戦略を俯瞰的に評価し、マーケティング計画の調整や実行を管理する。
このようにシックスハット法を活用することで、全方位的なマーケティング戦略の策定が可能になります。
まとめ
●シックスハット法は、常識にとらわれずにさまざまな視点から自由に発想して問題解決を試みる「水平思考」の1つ
●「白色は客観的・中立的」など帽子の色による視点の違いにより、それぞれ意見を述べることで多視点でのアイデアを出すことができる
●創造性に富んだユニークな解決策を生み出すことができたり、会議時間を短縮できたりするメリットがある
シックスハット法は、アイデア出しや問題解決だけではなく、さまざまな意思決定や戦略策定の際にも適用できます。また、必ずしも色や帽子にこだわらず、6つの視点でそれぞれ意見を出し合うことで問題解決の突破口が開く場合もあります。ぜひ色々な場面で活用してみてください。