世の中目立ちたい人とそうでもない人がいる! ヴェブレン効果と松竹梅の法則

とにかく人の注目を集めたい商品を購入したり、反対にあまり深く考えることもなく無難な選択をしていたりと、人が商品を選ぶ際の選び方はさまざまです。今回は、商品選択の際に働く2つの心理効果「ヴェブレン効果と松竹梅の法則」について解説します。ぜひ参考にしてください。

世の中目立ちたい人とそうでもない人がいる! ヴェブレン効果と松竹梅の法則

とにかく人の注目を集めたい商品を購入したり、反対にあまり深く考えることもなく無難な選択をしていたりと、人が商品を選ぶ際の選び方はさまざまです。今回は、商品選択の際に働く2つの心理効果「ヴェブレン効果と松竹梅の法則」について解説します。ぜひ参考にしてください。

羨ましがられたい人はヴェブレン効果に弱い

ヴェブレン効果とは

現在は、高級車やハイブランドの商品が飛ぶように売れる、という時代ではなくなりましたが、高級商品には一定の需要があります。高価格商品や希少価値のある商品を所有すること自体に特別な消費意識や欲求が生まれる心理効果を「ヴェブレン効果」と呼びます。

経済学者ライベンシュタインが1950年に発表した論文の中で提示したもので、「価格が高いほど顕示的消費が増加する現象」を表しています。ちなみに、ヴェブレンの名称は顕示的消費に初めて着目した著書「有閑階級の理論」を著した経済学者ヴェブレンに由来しています。

クルマを例に取ると、移動手段としてのクルマなら乗り心地や乗車人数、荷物の搭載量、走行性能、燃費、耐久性、デザイン、操縦性、価格などを基準にして車種を選択するはずです。しかしヴェブレン効果によると、「高級なクルマを所持していることで自分の社会的地位や経済的地位を誇る」ことが目的ですので、上記の実用性よりも「価格が高い」ことが最も重要な選択基準になります。その他の代表的なヴェブレン効果の対象となる商品であるハイブランドの服やアクセサリー、時計なども、同様に実用性とは無関係な基準で選択されることになります。

ヴェブレン効果を発揮するための条件

ヴェブレン効果は、他者から認められたいと感じる「承認欲求」や、周囲から注目されたいと感じる「自己顕示欲求」が要因となっていると考えられます。実際にその効果が発揮されるのは以下の条件を備えた商品です。

・社会的に広く価値が認められているもの
いくら高級なクルマでも誰も知らないマニアックなクルマでは、承認欲求も自己顕示欲求も満たすことはできません。「○○に乗っている」というだけで誰でも高級なものだと認識できる必要があります。

・希少価値があるもの
高級なだけではなく、希少価値があればさらに周囲から羨ましがられることになりますので、ヴェブレン効果も高くなります。

ヴェブレン効果のマーケティングへの応用とポイント

ヴェブレン効果のマーケティングへの応用には次のような例があります。

・ブランド戦略
ヴェブレン効果の最も代表的な応用例はブランド戦略でしょう。一朝一夕で高級ブランドに育てることはできませんが、一旦そのように認知されるとヴェブレンが非常に効果的に働き、「このブランドの服を着ていること」や「このブランドのクルマに乗っていること」自体が広く価値として認められるようになります。

・価格戦略
「少しでもお得に見える価格」に設定するのが通常の価格戦略でしょう。しかしヴェブレン効果に着目すると、「いかに高級に見せるか」が価格戦略の中心になります。価格が高ければ何でも良いというわけではありませんが、あえて競合製品よりも高くしたり、自社の他製品ラインと価格差をつけてみたりすることで、「価格による差別化」を図るのがヴェブレン効果を活用した価格戦略となります。もちろん品質や商品価値に見合った価格でなければ、高級感どころかブランド毀損につながる恐れがあることは忘れてはいけません。

ついつい真ん中を選んでしまう松竹梅の法則

松竹梅の法則とは

「松竹梅の法則」とは、松・竹・梅のような3段階の商品の選択肢がある場合に、その真ん中の選択肢が最も選ばれ易い心理傾向のことを言います。日本人特有の傾向とも考えられがちですが、海外でも同様の心理傾向が認められており、「ゴルディロックス効果」と呼ばれています。ゴルディロックスとは、英国の「3匹のくま」という物語に出てくる少女の名前で、その物語の中で少女がさまざまな「最も無難な真ん中の選択」をしていく様子から名付けられています。

松竹梅の法則は「極端の回避性」とも呼ばれる場合があり、3段階の選択肢がある場合に「1番安いものより品質がいいだろう」、「1番高いものは贅沢すぎる」と考えてつい真ん中を選択してしまいます。また、「1番安いものを選ぶと、貧乏やケチな人物だと思われてしまう」、「1番高いものを選択して失敗したらどうしよう」などの懸念が選択理由になることもあります。

選択肢の数と選択傾向の関係

松竹梅の法則で、それぞれが選ばれる比率は、2:5:3だと言われています。この選択肢が2つになると、今度は約7割の人が安いほうを選択するようになります。選択肢が2つの場合は、単純に価格の安いほうがお得に感じてしまうからです。

それでは選択肢が4つ以上になった場合はどうでしょう。その場合は、今度は「選択しない」という「選択」が増えてしまう傾向にあります。選択肢が増えることで「決定回避の法則」が働いてしまい、その場で決断するのを避けるようになるからです。1度に比較検討できる範囲は3~5個程度だと言われています。仮に顧客の利便性を考えて非常に多くの選択肢を用意しても、それで売上機会を逃してしまう場合もあるので注意が必要です。

マーケティングへの応用とポイント

松竹梅の法則をマーケティングで応用する際のポイントは次の2点が上げられます。

・高額商品から順に配置する
高額商品(松)を1番上や左など最初に見える位置に配置し、その後竹、梅と見えるようにします。最初に見せた高額商品の価格が印象に残り、アンカリング効果が働いてその価格を基準にして後の商品の価格を評価することになります。この結果、竹や梅がより安いという印象を受けます。

・真ん中(竹)の価格を下位商品寄りに設定する。
松:3万円、竹:2万円、梅:1万円のように均等に価格設定するのではなく、真ん中が低額商品寄りになるように、松:5万円、竹:2万円、梅:1万円のように価格設定します。松をより高額に感じてしまうと同時に、逆に低額の梅に「ほんの少し足せば」竹になるような印象を与えることで、お得感が生まれます。

まとめ

・ヴェブレン効果とは、高級商品を所有すること自体に特別な消費意欲を持つ心理効果のこと
・ヴェブレン効果を発揮するためには、社会的に広く価値が認められている商品であることが必要
・ブランド戦略や価格戦略などにおいてヴェブレン効果が活用されている
・松竹梅の法則とは3段階の商品選択肢がある場合に、真ん中が最も選ばれやすい心理傾向のこと
・選択肢が3段階である場合に松竹梅の法則が最も顕著に働く
・高額商品から順に見えるように配置したり、中間商品を低額商品寄りに価格設定したりすることが活用の際のポイント


消費者の価格感は、多くの複雑な要素で決まるものです。必ずしも安ければいい、または高ければいいというものでもありません。昨日は「安い!」と感じた同じ商品でも、今日改めて見るとそれほどでもない、というような経験をすることもあります。価格戦略で重要なのは、どのような対象(ターゲット)に対する、どのような意図の戦略なのかを明確にすることが重要です。

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