購入単価アップの切り札! アップセル・クロスセル成功のポイント

商品の売上は、販売する商品の「数量×単価」で表すことができます。マーケティング施策や営業活動の多くは、販売数量を増やすことを目的にしていますが、アップセルとクロスセルは、販売単価を増やすこと目的とする活動です。今回はそのようなアップセル・クロスセルを成功させるためのポイントを解説します。

購入単価アップの切り札! アップセル・クロスセル成功のポイント

購入単価アップの切り札! アップセル・クロスセル成功のポイント

商品の売上は、販売する商品の「数量×単価」で表すことができます。マーケティング施策や営業活動の多くは、販売数量を増やすことを目的にしていますが、アップセルとクロスセルは、販売単価を増やすこと目的とする活動です。今回はそのようなアップセル・クロスセルを成功させるためのポイントを解説します。

アップセル・クロスセルとは

アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品の上位グレード(機能に優れ価格も高い)の製品を購入してもらうこと、クロスセルは、購入する商品または購入済商品に関連する、周辺商品も購入してもらうことです。

これらにより販売単価アップを目指します。クロスセルは、厳密には商品購入時に関連商品も”同時に”購入してもらうことを言いますが、本来の販売単価増という目的から鑑みて、本コラムでは多少の時間差が存在しても同じくクロスセルとして取り扱うことにします。

アップセル・クロスセルを成功させるためのポイント

クロスセル・アップセルは、店頭では「ご予算は約1万円オーバーしますが、より性能に優れた新製品が先日発売されましたが、こちらはいかがですか?」や「こちらの商品と併せてご使いいただくと、より快適にお使いいただけます!」などの商品購入時に試みられます。

商品の購入機会さえあれば比較的簡単に実施できそうな印象がありますが、それを成功させるためにはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。

アップセルの場合

アップセル成功ポイントには以下のようなものがあります。もちろん、さまざまな状況によって成功確率は変わりますので、最低限必要な条件だとお考えください。

アップセルは単に「顧客に高い商品を売る行為」ではありません。顧客に現状よりもさらに大きな期待感を与えることで、1グレード上の商品を購入していただくことです。顧客が期待感を抱くことが無ければ、わざわざ追加コストを支払ってまで高い商品を購入することはありません。

自分が商品を購入する際の行動や思考を思い出してみればよく分かります。グレードの高い製品が欲しくなるはよくあることですが、「本当にその機能で必要か?」また逆に「その(上位グレードにある)機能が無くても大丈夫か?」、さらに「その機能の差は商品の価格差に相応しているか?」など文字通り「財布の中身」と綿密な相談をして最終的に決めるはずです。

商品が高額であったり、上位グレードとの価格差が大きければ悩む時間もそれだけ長くなるでしょう。

そして販売者側は、顧客が何に悩んでおりどのような点を重視するのかが把握できなければ、上記のような葛藤を解決するような提案ができません。従ってアップセルを行う際にまず必要なことは、顧客が何を求めているのか顧客視点になって把握することです。

本当に求めていることなら、多少コスト増になっても購入する確率は高いでしょう。逆にいくら優れた機能や特性を持った商品が存在したとしても、その機能などを顧客が重要視していなければ魅力に感じることはありません。

例えばデジタルカメラを例に取ると、1グレード上位機種ならBluetoothで撮影後の写真を即座に直接スマホやPCに取り込める機能が付いているとします。その機能が必要なのは、その場で写真を加工したり、すぐにSNSなどにアップしたりしたい人でしょう。

単に撮影内容の確認ならカメラ本体できますし、後で加工するのなら自宅や作業場でWi-Fiやメモリーカード経由でPCに転送すれば問題ありません。従って、上記のような撮影現場での利用を想定している顧客に対しては(このケースでの)アップセルは有効ですが、そのような使い方をしない顧客にとっては単に不要な売り込みにしか感じられません。

アップセルの成功に最低限必要なポイントをまとめると、

  • 顧客の悩みや求めるものを一定以上把握している

  • 顧客の望みにフィットしたアップグレード商品が存在する

  • 顧客の予算に余裕がある

の3点になります。

クロスセルの場合

クロスセルの場合は、事前にどのような「おすすめ商品」を準備しておくかがポイントになります。簡単におすすめ商品と言っても、元々購入しようとしている商品にはさまざまな利用シーンがあり、顧客のライフスタイルも多様です。それらに関連するおすすめ商品には多くの組み合わせが考えられる中、最も効果的な商品を選択しなければ効果は望めません。

対面販売の場合は、まずいかに顧客のライフスタイルや嗜好に結びつく情報を聞き出すことができるかが突破口となるでしょう。そしてそこから顧客にフィットした商品の提案ができるかどうかがポイントになります。その場合、一定以上の対面販売テクニックが必要になるのは言うまでもありません。

ECサイトなどのネット販売の場合は、「仕組み」が勝負を分けることになるでしょう。ECサイトなどでは「おすすめ商品」としてサイト上に提示する方法でクロスセルを仕掛けるのが一般的ですが、精度の高い商品を提示するためには、顧客のネット上の行動情報や購買記録などをどれほど精緻に取得しているか、また、どのようなロジックでおすすめ商品を決定しているかが重要なポイントになります。

例えば、自社商品の購入履歴だけではなく普段のどのような商品を閲覧しているか、さらには自社サイト以外でどのようなサイトや商品を閲覧しているかなどの情報を得ることができれば、顧客のことをより深く知ることができます。

また、実際のおすすめ商品を表示する際の判定ロジックには、ルールベース方式やコンテンツベースフィルタリング、協調フィルタリングなどさまざまなロジックが開発されています。各ロジックの詳細は割愛させていただきますが、サイト特性や状況に応じて最も適したものを選択することが必要になります。

店舗とECサイトにおける違い

前項でも触れましたが、店舗での対面販売とECサイトなどでのネット通販では、アップセル・クロスセルに対する考え方が少し違います。その違いについて少し触れておきましょう。

店舗販売

顧客と対話しながら、その場で態度や反応を確かめることができるのがメリット。臨機応変にリアルタイムでセールスすることができるが、接客テクニックによって成功率が大きく変わります。

また、人はいろいろと悩んだ末に商品を購入した場合、悩んだ分だけ商品購入後に大きく注意力や思考力が緩んでしまう「テンション・リダクション(tension reduction、緊張の緩和)効果」というものが現れると言われています。店舗の場合は、悩んだ末にメイン商品を購入後、このテンション・リダクション効果が現れているタイミングでクロスセルを仕掛けると成功する確率が高くなると言われています。

EC、ネット通販

店舗のように顧客のその場の状況や気持ちは判断できませんが、前述のようにさまざまな情報に基づいた施策を実施することが可能です。このような前提でECサイトでは接客テクニックよりも情報戦に重きが置かれています。近年は顧客の状況にフィットした個別のサイトの動きが設定できる「Web接客」が注目されています。

また、多少「ズレた」商品をお薦めしてしまっても、実店舗の場合ほど顧客の気分を害することがありませんので、さまざまな実験的なアップセル・クロスセルを実施することもメリットです。さらに、メールアドレスを取得している場合やリマーケティングの手法を用いることで、商品購入後の比較的長いスパンでのクロスセルを仕掛けることも有効です。

まとめ

  • アップセルとは、顧客の購入予定商品より上位グレードの商品を購入してもらうことで購入単価を上げる活動

  • クロスセルとは、購入商品に関連する商品も同時購入してもらうことで購入単価を上げる活動

  • アップセルでは、顧客の期待や要望にフィットした上位商品を薦めることが成功の秘訣

  • クロスセルでは、さまざまな利用シーンや顧客のライフスタイルを想定した関連商品を薦めることが成功の秘訣

アップセルにしてもクロスセルにしても、「売りたい気持ち」を前面に出してしまっては返って逆効果です。販売者側の視点ではなく、顧客視点、顧客の気持ちになって仕掛けていくことがむしろ成功につながります。

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