時代とともに消費者像の捉え方は変わる!─デモグラフィック変数/サイコグラフィック変数

別の回(https://blog.markerise.com/glossary/161128/)でお話ししたように、消費者をさまざまな特性によって分類し、その分類ごとに最適なマーケティング施策を講じるマーケティングセグメンテーションによって、企業と消費者の間のマーケティングコミュニケーションやプロモーション、商品開発などの効率や精度を上げることができます。

時代とともに消費者像の捉え方は変わる!─デモグラフィック変数/サイコグラフィック変数

別の回(https://blog.markerise.com/glossary/161128/)でお話ししたように、消費者をさまざまな特性によって分類し、その分類ごとに最適なマーケティング施策を講じるマーケティングセグメンテーションによって、企業と消費者の間のマーケティングコミュニケーションやプロモーション、商品開発などの効率や精度を上げることができます。

今回はそのようなマーケティングセグメンテーションに使われるセグメント軸であるデモグラフィック変数、サイコグラフィック変数、そしてさらに行動変数についてご説明します。

マスマーケティングの時代とデモグラフィック変数

メディアの変化と共に消費者像が変化し、それに応じてマーケティングセグメンテーションの分類軸も変わってきました。

70年代頃までのマスメディアを使った広告を主な施策としてきたマスマーケティングが主流の時代は、消費者をできるだけ明確に区分けして、それに対して明快なメッセージを投げかけることで大きな成果を上げてきました。

そこで大きな効果を挙げてきたのが、デモグラフィック変数によるセグメンテーションとそれに基づくマーケティング施策です。

デモグラフィック変数とは、人口統計学的変数とも呼ばれ、年齢や性別、世帯人数、所得、職業、学歴などの基準で消費者を分類します。この時代は言い換えると「プロダクトアウト」の時代だとも言えます。プロダクトアウトとは、消費者の欲する商品を開発して販売するのではなく、企業が「良いモノ」と判断した製品を開発しそしてそれを消費者に販売するという製品開発の方法です。

技術の進歩(イノベーション)が著しい、例えば日本では高度成長期などにおいては、十分に有効な開発手法ですが、技術の進歩のスピードが鈍化し、それと反対に「情報の流通スピード」が早くなってくると、消費者のニーズと企業が開発する製品の間に”ギャップ”が生じてきます。「消費者ニーズの多様化」という現象です。

イノベーションの停滞で同じような製品が並ぶようになり、なおかつさまざまな情報が飛び交うことで消費者の価値観が多様化。消費者の購入動機が「人と同じモノを持つ喜び」から「人と違ったモノを持つ楽しみ」に変わっていった時代だとも言えます。

このような変化によって、世のマーケッターたちは消費者の内面を詳しく知る必要が生じてきます。

より深く消費者を知るためのサイコグラフィック変数

消費者ニーズの多様化によって、同じ「40代、男性、会社員」(デモグラフィック変数の一例)でも、購入する製品に大きな違いが生じてきました。マスマーケティングの時代において主流であったデモグラフィック変数によるセグメンテーションだけでは消費者像がつかみにくくなってきたために、さらに細分化する必要があります。そこで用いられたのが、サイコグラフィック変数です。

サイコグラフィック変数とは、個々人の価値観やライフスタイル、性格やこだわりなど、個人的な嗜好すなわち内面的な要素をセグメント軸に取り入れたものです。デモグラフィック変数が外面的/客観的な性質を表していましたので、それを補完する働きがあります。

デモグラフィック変数をさらに細分化したものではなく、全く別次元のセグメント軸ですので、両者の変数をかけ合わせて使うことになります。

どういうことかと言いうと、例えば「菜食主義者」の方は「40代、男性、会社員」にもおられるかもしれませんが、同様にまったく違ったデモグラフィックを持つ「20代、女性、フリーター」の中にも同じように存在する可能性があります。

このように「40代、男性、会社員」の「菜食主義者」の方、または「20代、女性、フリーター」の「菜食主義者」の方のように2つの変数を掛け合わせることでセグメントは細かくはなりますが、特定のデモグラフィックによるセグメントをさらに細分化するような性質のものではありません。

サイコグラフィック変数は、消費者の内面に焦点をあててその「行動の原因」を探ることができる変数でもあります。前の例で説明しますと、「40代、男性、会社員」と「20代、女性、フリーター」では前者の方がレストランでの野菜料理の注文が多かったとします。

その原因を探ってみると、前者の方が菜食主義者の方の比率が多かった、というように、「なぜそうなるのか?」の原因がサイコグラフィック変数によって明らかにできる場合があります。さらに深掘りして、菜食主義者である理由も、健康志向であったり動物愛護の観点であったり、また宗教的な理由であったりとさまざまな理由が考えられるでしょう。

そのような細分化された要因や行動理由としてのサイコグラフィック変数に従って、マーケティングメッセージを変えていけば、いわゆる「届く」メッセージを発信できる可能性が高まります。反対にそれらをまったく無視してメッセージを発してしまうと、効果が薄かったりクレームを発生させる恐れが高まります。

行動変数でさらに深みに! ─パーソナルマーケティングの時代が到来

サイコグラフィック変数によるセグメンテーションも万能ではありません。例えばおなじサイコグラフィック変数のセグメントでも、購買行動が必ずしも同じではないということがあるからです。

例えば仮に2人が同じ理由で同じ腕時計を購入するとしても、一方はいつも時計を購入する近くの時計専門店で購入するが、一方はネット通販で購入する、というようなケースは日常的に発生します。

マーケッターとしては、ぜひとも顧客の行動を分析したくなるでしょう。なぜなら行動情報を分析することにより、消費者の次の行動や今考えていることが予測できたり推測できたりする可能性があるからです。

消費者の行動情報は行動変数と呼ばれ、インターネットとデジタルマーケティングの進展と共にその活用が本格化しました。

消費者の行動は、従来はテストマーケティングやサンプルを絞り込んだリサーチなどを実施しなければ把握できませんでした。それもかなり限定された条件下でのみ可能でした。

しかし現在では条件さえ整えば、各Webサイトの訪問履歴やサイト内での回遊状況など、消費者一人ひとりの具体的で細かい行動情報を取得することができます。そしてそれらの情報を収集/分析することで、消費者の行動や嗜好が一定の精度で予測できるようになってきました。

特定の消費者がどのような物事や商品を好み、商品を購入する前にはどのような行動を取るのか? など、現在はあくまでネット上での行動には限定されますが、その行動分析の収集/精度は年々高度化しています。(さらにネット以外の行動も統合して分析/活用していこうという動きも進んでいます)

行動変数はログなどに記録された客観的な情報です。インターネット上で展開されるデジタルマーケティングでは、そのような行動変数をリアルタイムで入手/分析し、”その”消費者個人の行動から判断した最適かつパーソナルなマーケティング施策を、Web上でリアルタイムで展開することもできるようになっています。

行動変数は単独で活用される場合も多いですが、デモグラフィック変数やサイコグラフィック変数と組み合わせ活用することにより、さらに精度が向上するものと考えられます。

まとめ

  • マスマーケティングの時代では、年齢や性別、職業などのデモグラフィック変数がセグメント軸として主に使われていた

  • いわゆる消費者ニーズの多様化に伴い、内面的な要素であるサイコグラフィック変数が使われるようになった

  • 近年のデジタルマーケティングでは、消費者の実際の行動に基づく行動変数が重視される傾向にある

今回は、マスマーケティングセグメンテーションで用いるさまざまな分類軸についてお話しすることで結果的にマーケティングの歴史についても触れることになりました。近年は行動変数に着目されるケースが多いのですが、その他の変数も現在でも意味のあるセグメント軸です。

できるだけさまざまな切り口で考えてみるのが消費者に近づく最良の方法なのではないかと考えられます。

  • 製造業BtoB企業のためのメールマーケティングガイドブック