状況に応じて使い分けよう!価格戦略で成功するためのポイント

いくらで売れば最も商品がたくさん売れて、しかも利益が最大になるか? そのような価格を設定することが価格戦略の目的です。一般的に価格を下げれば商品は多く売れ、高く設定すると販売量は落ちます。また、価格を下げれば利益率は低下し、高くすると利益率は上がります。このように、販売量と利益は販売価格を介してトレードオフの関係にありますが、ここから最適解を見つけるための方法が価格戦略です。

状況に応じて使い分けよう!価格戦略で成功するためのポイント

いくらで売れば最も商品がたくさん売れて、しかも利益が最大になるか? そのような価格を設定することが価格戦略の目的です。一般的に価格を下げれば商品は多く売れ、高く設定すると販売量は落ちます。また、価格を下げれば利益率は低下し、高くすると利益率は上がります。このように、販売量と利益は販売価格を介してトレードオフの関係にありますが、ここから最適解を見つけるための方法が価格戦略です。

価格戦略は、ある1つの視点や基準のみで判断することは困難です。なぜなら、商品のライフサイクルや事業戦略/ポリシー、その時々の市場の状況などにより、何を重視すべきかがさまざまに変化するからです。定まった答えがないからこそ、その時々の判断基準が明確でないと、誤った戦略を選択してしまうリスクがあります。今回は価格戦略の考える上での前提条件となるものをご説明し、さまざまな価格戦略の方法を解説します。

価格戦略の前提条件となるもの

3Cを正しく認識する

3Cとは、事業環境分析などで用いられる3つのC、顧客/市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)です。個別の価格戦略の話しに入る前に、その商品の市場環境である3Cを認識しておかなければ、正しい判断を下すことができません。

顧客/市場(Customer)について

  • 「その商品の顧客は誰か、どのような特性を持っているか」
  • 「なぜ顧客はその商品を買うのか、またはなぜ買わないのか」
  • 「市場規模はどれぐらいで、これから成長するのか縮小するのか」など

競合(Competitor)

  • 「競合会社はどこか」
  • 「商品のどこが同じでどこが違うのか」
  • 「商品以外でどこが同じでどこが違うのか」など

自社(Company)

  • 「自社商品の強みはどこで弱みはどこか」
  • 「コスト構造はどうなっているのか」
  • 「流通チャネルはどのようになっているのか」など

このような状況について把握していて始めて「どのような価格が適正なのか?」に対する正しい判断を下すことが可能になります。

価格を決めるのは消費者の「支払意志価格」

正常な競争原理が働いている限りでは、商品価格の下限は「製造コスト」であり、上限は消費者がその商品に感じる価値=「カスタマーバリュー」の最大値になります。そして最終的に商品の価格を決めるのは消費者の「支払意志価格」です。支払意志価格は、「これぐらいの価格ならこの商品に支払ってもいい」と感じる価格であり、商品や消費者の収入などによって変化します。

消耗品などは1商品に対するカスタマーバリューが小さいために価格が下がります。また、価格が下がれば収入の低い消費者まで購入する意志が働くために販売量は増えます。このような最終的な価格決定要因である支払意志価格を分析することは価格戦略にとって重要な要素となり、そのためには前述の3Cを把握しておく必要があります。

価格戦略はマーケティングの4Pの1つ

3Cや4Pなどの略語が続いてしまいますが、価格戦略はマーケティングの最も基本的なフレームワークである4Pの中の1つです。マーケティングの4Pとは、「製品(Product)」、「価格(Price)」、「流通(Place)」、「プロモーション(Promotion)」を表し、それぞれの要素に関して適切な戦略を取りながら、全体で方向性の統一や整合性を取ることが必要になります。従って、価格戦略はそれ自身の条件だけではなく、製品や流通、プロモーションと整合性を取りながら、最も効果的にマーケティングの目的を達成できるものが選択されなければなりません。

さまざまな価格設定の方法

価格戦略の短期的な目標は変化する

価格戦略の本来の目的は、前述の通り「販売量と利益が最大化するような価格を設定すること」ですが、短期的にはその時々の状況、例えば自社の事業戦略、市場や競合の状況、商品のプロダクトライフサイクルなどにより戦術レベルでの目標が変化します。

販売量や売上額を伸ばすのか、利益率(額)を求めるのか、とにかくシェア拡大するのか、はたまた競合への対抗策を講じるのかなど、状況に応じてマーケティング施策が変化するように価格戦略も戦術レベルでは状況に応じてさまざまな方法が採用されます。

それでは具体的にどのような価格設定の方法があるのかを見てみましょう。

価格設定方法は大きく分けて3種類

価格設定の方法は大きく分けて、製造コストを基準にするもの、市場や競合の状況から判断するもの、マーケティング戦略の視点から判断するものがあります。

製造コストを基準にするもの

直接原価に販管費などの間接費用を加えた総費用に、さらに利益額を足しこんだ額を販売価格として設定する「コストプラス法」や、あらかじめ目標販売数を設定した上で、それに掛かる総費用と目標利益率から販売価格を算出する「目標利益法(損益分岐法)」などがあります。

市場や競合の状況から判断するもの

今の市場価格を基準にする「市場価格追随法」やその市場でシェアが高い企業の価格帯に合わせて価格設定する「プライスリーダー追随法」、今まで習慣的に販売されてきた価格帯を基準にする「習慣価格法」などがあります。

マーケティング戦略の視点から判断するもの

価格に敏感な層と鈍感な層に対してそれぞれ安い価格のプランと高い価格のプランを設定して顧客に選択してもらう「名声価格法(プレミアムプライシング)」や、顧客によって別々の価格を設定する「価格差別化法」などがあります。

市場投入時の価格戦略

新たに製品を市場投入する場合、上記でご説明した価格設定の方法とは違った視点で価格の基準を考える必要があります。

製品を新規投入する場合はさまざまなリスクが存在しますが、リスクが存在するからこそ先行の利をでき得る限り享受することを考えなければなりません。先行の利を得ようとする場合に採るべき方針には、「初期の価格を高く設定して、より多くの利益を獲得する」か「初期の価格を安く設定して、競合が参入してくる前に圧倒的なシェアを獲得するか」の2つがあります。前者が「スキミングプライス(上澄吸収価格)戦略」、後者が「ペネトレーションプライス(市場浸透価格)戦略」と呼ばれます。

スキミングプライス戦略

スキミングプライス戦略は、市場投入時に価格を高く設定し初期段階で一気に利益を確保しようとする戦略です。主に商品のプロダクトライフサイクルの最初期の「導入期」に、富裕層やマニア層のイノベータをターゲットに採られる戦略です。成長が鈍化したり他社が本格的に参入してきた段階から徐々に価格を引き下げてシェアを確保します。

スキミングプライス戦略は、市場投入の初期段階で利益を確保することにより開発費や販売/営業費用を早期に回収できるメリットがありますが、一定以上の参入障壁があり、価格弾力性が低く高価格の新商品に対する需要が存在することが、成功の条件となります。

ペネトレーションプライス戦略

スキミングプライス戦略とは反対に、初期の価格を低く設定して一気にシェアを確保する戦略がペネトレーションプライス戦略です。プロダクトライフサイクルの「導入期」に続く「成長期」に低価格戦略をとり、実利を重視するアーリーマジョリティ層をターゲットとするケースなどがあります。

ペネトレーションプライス戦略は、早期にシェアを獲得することで他社の参入を困難にし、その状態で長期に渡り利益を確保することが目的ですが、価格を低く設定し過ぎたことにより初期に回収できた利益を確保し損ねるリスクがあります。ペネトレーションプライス戦略は、価格弾力性が高く、価格に対して消費者が敏感である商品であることが成功の条件です。

まとめ

  • 的確な価格戦略を採るためには、市場や顧客、競合の状況についてあらかじめ知っておく必要がある
  • 価格設定の方法には製造コストを基準にするものや市場/競合の状況から判断するもの、マーケティング戦略の視点から判断するものなどがあり、その時々の目標に従って適切な方法を用いる
  • 市場投入時の価格戦略には、最初期に利益確保を優先するスキミングプライス戦略と、市場シェアを最優先するペネトレーションプライス戦略がある。

いかがでしたでしょうか。商品価格は、販売する側の企業から見ればできるだけ高い方が良く、反対に買う方から見ればできるだけ安くして欲しいものです。そこに競合や市場の要素が入ってくることで三つ巴の状態になりますが、その三つ巴の状態から最適解を見つけ出すのが価格戦略の難しさでもあり面白さでもあります。簡単に答えが見つからない場合もありますが、そのような場合は短期的な損得だけではなく、中長期的な利得の観点で判断すれば意外と答えが見つかるものです。

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