製品の一生はプロダクトライフサイクルで決まる
「プロダクトライフサイクル」とは、製品の市場への投入から撤退までをいくつかの段階に分けて考え、それぞれの状態を把握することで、製品のマーケティング戦略に活用しようとする考え方です。「製品ライフサイクル」と呼ばれる場合もあります。
今回は、そのような製品の市場における各段階がどのようなものなのか、またそれぞれの段階でどのようなことを考慮して戦略を立てなければならないのかについてご説明します。
この記事の目次
「プロダクトライフサイクル」とは、製品の市場への投入から撤退までをいくつかの段階に分けて考え、それぞれの状態を把握することで、製品のマーケティング戦略に活用しようとする考え方です。「製品ライフサイクル」と呼ばれる場合もあります。
今回は、そのような製品の市場における各段階がどのようなものなのか、またそれぞれの段階でどのようなことを考慮して戦略を立てなければならないのかについてご説明します。
製品の「一生」は4つの段階に分けられる
プロダクトライフサイクルは、その各段階を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つのサイクルに分けて考えます。多くの場合、各段階の時系列を横軸に、売上や利益を縦軸にとった曲線グラフで表現されます。
また、製品が市場に受け入れられそして広まっていく過程は、実際にはタイプの違うさまざまな消費者層に徐々に受け入れられることによって進んでいきます。プロダクトライフサイクルの各段階とそれに対応する消費者のタイプも合わせてご説明していきます。
導入期
新たな製品を市場に投入した直後の時期です。認知度が低く、たとえ知っていたとしてもその必要性などがまだあまり感じられない時期です。従って需要量も少なくなります。ターゲットとなる消費者のタイプはイノベーターとアーリーアダプターが中心となり、これらを対象に先進性を訴求すると共に、認知度の向上や啓蒙活動を行うことが活動の中心となります。また、サンプリングなども積極的に実施されます。
また、流通経路も確立していないため、流通業者などを対象に販路確保や拡大など施策も必要になります。市場拡大のため多額な資金が必要になる時期でもあります。
イノベーター(革新者)
新しいものを進んで受け入れるタイプで全体の2.5%。
アーリーアダプター(初期採用者)
流行に敏感だが、自ら情報収集して判断するタイプ。いわゆる「オピニオンリーダー」となり他の消費者へ影響を与える。全体の13.5%を構成する。
成長期
市場への認知が進み需要量が急速に増加するのがこの成長期です。先進的なイノベーターやアーリーアダプターに変わり、実利を重んじるアーリーマジョリティが主なターゲットになります。
需要量増加に伴い売上も伸びますが、競合他社の参入も激しくなります。シェア確立(独占)が主な課題となり、ブランドイメージの浸透やベネフィット訴求が主なコミュニケーション戦略となります。製造設備や流通経路拡大のために多額の資金が必要な時期になります。
アーリーマジョリティ(前期追随者)
イノベーションの採用には比較的慎重な初期採用者。実用性や実績などを重んじる。全体の34.0%を占める。
成熟期
需要が一巡し需要の伸びが鈍化する時期です。この時期に製品を受け入れる層はレイトマジョリティと呼ばれる層になります。
ある程度利益は確保できますが、市場規模が限られてくるためシェア争い、いわゆるパイの取り合いが激しくなります。競合他社製品との差別化やブランディングなどの施策に重点が置かれるようになります。また同時に価格競争も激しくなります。
レイトマジョリティ(後期追随者)
フォロワーとも呼ばれる後期採用者。新しいものに対する態度は比較的否定的で、大多数が採用しているのを見て自分も選択するタイプ。全体の34.0%を構成する。
衰退期
新しい技術や製品の登場により需要が衰退していく時期です。マーケットの対象としては最も保守的なラガード層になります。
投資する資金需要な当然少なくなりますが、売上、利益は徐々に低下していきます。市場の撤退を判断すべき時期です。
ラガード(遅滞者)
世の中の動きに関心が薄く最も保守的なタイプ。全体の16.0%。
プロダクトライフサイクルのバリエーションやイレギュラーケース
プロダクトライフサイクルの考え方は上記でご説明した通りですが、すべての製品がこのようなサイクルを一定期間に綺麗に通過していく訳ではありません。製品カテゴリーや製品そのもの、また市場や世の中の状況によりさまざまなバリエーションが存在します。
衰退期がなかなか訪れずにロングセラーを続ける「持続型」や、流行に左右されてその時の流行スタイルごとに活況する「スタイル型」、また、思わぬきっかけでブレイクして急に市場が拡大する「遅咲き型」などのバリエーションが存在します。
また、一般的には生活に深く関わる住宅や衣服、また芸術関連などの流行にあまり左右されないものは、ゆっくりとした成長と衰退を繰り返しながら長きにわたって市場を継続していきますが、流行や嗜好に左右されやすい製品は、より早い速度で成長と衰退を迎えることになります。
さらに、さまざまな理由で通常とは違うイレギュラーなパターンをたどるケースもあります。
「導入期→衰退期」のパターン
成長期、成熟期がないパターンです。顧客ニーズがない場合や顧客ニーズが顕在化していない(製品投入が早過ぎるなど)場合はこのようなパターンをたどることになります。
「導入期→成長期→衰退期」のパターン
成熟期がない場合です。主なケースは、先進的な消費者の要求には応えることができたが、広く大衆の指示が得られなかったために早急に衰退してしまうケースです。他にも強力な競合製品が現れたために成熟期に入る前に市場を奪われてしまった場合や、一過性の流行に終わってしまった場合などが考えられます。
プロダクトライフサイクルにおける壁「キャズム」の存在
プロダクトライフサイクル上で、製品を大きく成長させるための最も重要で困難な壁が、「導入期」と「成長期」の間の「キャズム」(深い溝)にあると言われています。
導入期と成長期では、対象となるターゲットがイノベーターやアーリーアダプターからアーリーマジョリティへ移る時です、イノベーターなどは積極的に新しい物事を好む層ですので、先進性をアピールすることである程度受け入れられますが、アーリーマジョリティは新しい物事への拒否感はないものの、より「実利性」を優先します。
すなわち、新しいものでも実際に役立つものでなければ受け入れてもらえません。このアーリーマジョリティへの訴求と浸透が最も難しいとされ、そこに深い溝があると言われます。
それではこの溝はどのように超えれば良いのでしょうか。
解決策の1つとして考えられているのが「ボーリンググレーン」という方法です。これはボーリングの1番ピンを倒すと、2番ピン、3番ピンが次々と倒れていくさまを表したもので、市場やターゲットで1番ピンにあたる特定のセグメントをまずは集中的に攻めて「倒す」ことにより市場全体にそれを波及させていくという方法です。
ターゲットの中でも1番ピンに相当するセグメントがどれなのかを見定め、そこに絞ってまずは圧倒的な成功を収め、次の2番ピンに相当するセグメントを攻めます。この方法が有効なのは、実利主義者であるアーリーマジョリティは最初のセグメントでの成功などの「事例や実例」に弱いからです。「そんなに効果があるのなら自分も使ってみようか」という気になる可能性が高くなるので、小さなセグメントで実績を徐々に挙げていくことにより、ボーリンググレーンが有効に働きます。
まとめ
- プロダクトライフサイクルは、製品の市場投入から撤退までの段階を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つのサイクルで表したものである
- 各段階で対象となる消費者層が違い、取るべき戦略にも違いがある
- プロダクトライフサイクルにはさまざまなバリエーションがあり、イレギュラーケースも発生する
- 導入期と成長期の間には大きな壁となるキャズムが存在し、それを乗り越えるためにボーリンググレーンなどの手法が有効である
プロダクトライフサイクルとは、製品を人や生きものに喩えて扱った考え方です。人と同じように製品に関しても、それを世に出すだけではなくその後どのように成長させていくのか、ということが非常に重要なことです。可能な限り製品の開発時からその成長イメージを考えておきたいものです。