強制的に新しいアイデアを生み出す!「オズボーンのチェックリスト」とは?
「オズボーンのチェックリスト」とは、ブレーンストーミングを発案したアメリカのアレックス・F・オズボーン氏によって考案された発想法です。あるテーマや対象に対して、強制的にさまざま違った観点からの発想の転換を促すことで、新しいアイデアを創出しようとするものです。
この記事の目次
マーケティング施策を企画・発案する場合、市場や競合、消費者などの状況を客観的な情報に基づいて判断した上で行う必要があります。
しかし、マーケティング施策の企画はその目的などによって、従来の方法を踏襲した方が良い場合もあれば、斬新なアイデアが必要な場合もあります。
商品企画などと同様、いわゆる「突き抜けたアイデア」が必要になる時があるということです。
成功した多くのマーケティング施策は、客観的なデータおよび分析と、突き抜けた新しいアイデアとをうまく組み合わせて、実際に実行可能なマーケティング施策の形へ落とし込んでいるケースが多く見受けられます。
しかし多くの方が経験しているように、新しいアイデアはいざ考えてみると意外と浮かばないもの。
そのような場面で役に立つのがさまざまな「発想法」です。
ブレーンストーミングやKJ法をはじめ、マインドマップ、PMI法、SCAMPER法、シックスハット法、TRIZ法など目的や場面に合わせてさまざまな発想法が開発されそして活用されています。
「オズボーンのチェックリスト」はそのようなアイデア発想法の1つです。
「オズボーンのチェックリスト」とは?
「オズボーンのチェックリスト」とは、ブレーンストーミングを発案したアメリカのアレックス・F・オズボーン氏によって考案された発想法です。
あるテーマや対象に対して、強制的にさまざま違った観点からの発想の転換を促すことで、新しいアイデアを創出しようとするものです。
実際の発想の転換のきっかけとして使われる項目は、同氏の著書『YOUR CREATIVE POWER』(新版:『創造力を生かす―アイディアを得る38の方法』)から、M・I・Tクリエイティブ・エンジニアリング・ラボラトリーが選出した9項目のチェックリストが一般的です。
具体的には次のような内容です。
1.転用 他に使い道はないか? (Put to other uses)
2.応用 他からアイデアを借りられないか?(Adapt)
3.変更 変えてみたらどうか? (Modify)
4.拡大 大きくしたらどうか? (Magnify)
5.縮小 小さくしたらどうか? (Minify)
6.代用 他のもので代用できないか? (Substitute)
7.置換 入れ替えてみたらどうか? (Rearrange)
8.逆転 逆にしてみたらどうか? (Reverse)
9.結合 組み合わせてみたらどうか? (Combine)
このようなさまざまな視点で、対象をあらゆる角度から見直すことによってアイデアを創出する手法です。それぞれの項目についてもう少し詳しく見てみましょう。
オズボーンのチェックリストの内容
転用「他に使い道はないか?」
新しい使い方がないか、一部を改善・修正してみたらどうなるか、他の分野や領域で使うことはできないか、今までと異なった顧客・消費者向けに使うことができないか、など、使い方に焦点を当てて新しいアイデアを膨らませます。
電球を殺菌装置に使ったり、EV(電気自動車)用のバッテリーを家庭用電源にも使えるようにするなどの例が該当します。
また、賞味期限切れ間近の食品を半額で販売したり、パッケージを有名なイラストレーターに描いてもらうなども転用の一種と言えるでしょう。
応用「他からアイデアを借りられないか?」
応用では、他に似たアイデアがないか、過去に似たものがないか、他業種で似たものはないか、何か真似できることはないか、などさまざまな類似性を利用して発想を広げます。
もちろん意匠や仕組みなどを真似してしまうと著作権上の問題が発生する可能性がありますので、真似するのはあくまで発想のみです。
例としては、おでんの購入方法からヒントを得た「おかずを選べるお弁当」や、ヤクルトの販売方法を模した「お弁当の訪問販売」、コウモリが持つ機構からアイデアを得た超音波による衝突防止機能などがあります。
変更「変えてみたらどうか?」
変えることができそうなところがあれば一度変えてみる、というのが変更の発想です。少し”ひねり”を加えてみたり、意味や印象、素材や機能、色や音、動きや感触、匂いや味、濃度や様式などを変えてみたりすることで新しい発想を生み出します。
「何を変えるのか?」がポイントになりますので、さまざまな視点で変化軸を探すことが重要になります。
例えばコップの取っ手を2つにして子供が持ちやすくしたり、東北出身者向けに味の濃い弁当を販売したり、また、生産者の顔写真付きの玉子で印象を変えてみたりする方法が考えられます。
従来のガソリンエンジン車から近年のEV車への移行も変更の発想の一種です。
拡大「大きくしたらどうか?」
拡大では、より大きくしてみたり、何を加えてみたりすることで新しいアイデアを模索します。
大きくしたり加える要素は、大きさや長さ、高さ、重量、面積、体積、強度、回数、時間などの機能・性能面や、地域や意味合い、価値、目的、場所、ターゲットなどの概念的な面などさまざまなものがあります。
価値を更に高めた「こだわりの超高級弁当」や地域の概念を拡大した「世界のお弁当(フランス編)」、もう少し発想を変えて、服や靴などのラージサイズ専門店やコンビニへの高頻度配達なども拡大の発想の一種です。
また近年売上が好調なビッグサイズの軽自動車は拡大での成功例と言えます。
縮小「小さくしたらどうか?」
文字通り小さくしたり、何かを削除、省略したり、分割してみることでアイデアを生み出します。
小さくしたり省略したりする対象は、前節で挙げた機能・性質面や概念的な面と同じく、大きさや長さ、価値や目的などになります。
世界最小のデジタルカメラや取っ手と本体を分割できるフライパン、おかずが一品しかないシンプルなお弁当、その地域でしか手に入らない地域限定商品、シャンプーなし理髪店、一人乗り用のコンパクト自動車などが縮小による発想の例です。
代用「他のもので代用できないか?」
人やモノ、材料、場所、時間、素材、製法、またアプローチ方法や構成方法などを他のものや方法で代用することで発想を転換します。
輸血用人工血液や豆乳ケーキ、ベロタクシーなどが代用の例です。
また、タイ米を使ったタイ弁当や人気店レシピを採用した弁当なども代用の例と言えるでしょう。
置換「入れ替えてみたらどうか?」
置換では、要素を取り替えてみたり、他のパターンを取り入れたり、アレンジし直したり、また原因と結果を入れ替えたりすることで新しいアイデアを発想します。
対象となるのは位置や順番、配置、時間、パターン、パーツ、レイアウト、方法などです。
別の言葉に置き換えてみたり、社内のデスクの配置を変更してみたり、また発表の順序を変えてみるなどの実践法が考えられます。
また、おかず8割にご飯2割の配置に変更したお弁当や、レイアウトを置き換えておかずをご飯の下に隠した闇弁当などの発想も考えられます。
逆転「逆にしてみたらどうか?」
文字通り、前後や上下・左右、裏と表、プラスとマイナス、順番や方法、立場、時間などを反対にしてみて発想を広げる方法です。
また、単に「後ろ向き」にしてみたり、主客を転倒させるという方法もあります。
リバーシブルの衣類やバッグ、左手用ペン、通常の順序と逆の方法で価格を先に決めてから始める商品開発などが逆転の方法として考えられます。
結合「組み合わせてみたらどうか?」
アイデアやいろいろなものを組み合わせたり、混ぜ合わせたりすることでアイデアを生み出す方法です。
モノと体験を組み合わせたり、古いものと新しいものを組み合わせたりするなどさまざまなバリエーションが考えられます。
消しゴム付きシャープペンシルやハイブリッドカー、カメラ付き携帯電話などが結合での成功例でしょう。
また、組み合わせを自由に選択できる食器セットや体験型ギフトなども結合の例です。
まとめ
- オズボーンのチェックリストは、強制的に発想の転換を促すことで新しいアイデア創出する手法
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転用や応用、変更、拡大など9項目のチェックリストを利用するのが一般的
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具体的なテーマに対してチェックリストの項目を適用して新しいアイデアを発想することができる
オズボーンのチェックリストは、チェックリストという方法を取ることで、ある程度発想方法を限定してアイデアを創出する方法です。
従って、他の発想法と比較して突飛なアイデアが出にくいという欠点があります。
発想の幅をより広げたい場合は、ブレーンストーミングやKJ法などと組み合わせて活用する方が良いでしょう。